落語はほぼ毎晩、夕食後に聴いていますが、このところ感想を書こうという噺/噺家さんにはなかなか出会えません。
今日はご贔屓の六代目円生師匠。「三年目」は初めて聴きました。
幽霊譚なのですが、おどろおどろしいものではありません。むしろ、女性の可愛さを描く、どこかコミカルな怪談。円生師匠はくすぐりを入れながら、後味の良い落語に仕上げています。
不治の病にかかった愛妻が、「私が死んだら、あなたはきっと次の人と一緒になるんでしょうね」と、未来へ向けてやきもちをやく。男は、「そんなに心配なら、俺が結婚する晩に化けて出ればいいじゃないか。そうしたら嫁は逃げて帰るから、俺は一人のままだ」。
安心したのか、妻は間もなく逝く。
周囲の勧めがあって、男はついつい後妻をもらうことに。式を挙げた夜、男は約束の八ッ(午前2時)まで寝ずに待つが、先妻の幽霊は出ない。何日、待っても出ない。そのうち、後妻との間に子供まで出来て、3年が経ち……。
出てきた幽霊の描写は、さすが円生師匠、その時だけは怪談調が際立ちます。
「女は緑の黒髪をおどろに振り乱し――」と印象深く語りあげ、それがオチにつながってゆきます。うまい!