一昨日、紹介した円城塔さんの長編『エピローグ』に「シチュエーション料理」というとても面白いものが登場します。
アルフレッド・y・yという人物が研究している学問というか、グルメ道の一種なのですが、このコンセプトが素晴らしい。実際にこういうことをアドバイスしたり、企画したりする人がいないのが不思議なくらいです。
どういうものかというと、いかなる状況で何を食べるとより美味しく感じられるかについての研究。つまり、食事は料理だけでなく、それをいただくシチュエーションも大事だということを推し進めたグルメ道なのですね。
これを突き詰めてゆくと、とんでもないことになりかねないことは、容易に想像できます。たとえば、砂漠で何日も彷徨った後のコップ一杯の水とか、酷寒の地で指を温めながら齧る焼き芋とか、数十年ぶりに再開した恋人と分け合うタコ焼きとか……味のために困難な状況を設定しだすと、命まで危なくなりかねない。
小説にはそこまでは描かれていませんが、でも、ツアー会社の企画でそのうち実現するかもしれませんねえ、さまざまなシチュエーション料理の旅が。