惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

SFセミナー2016

2016-05-04 21:50:52 | SF

 連休なかばは毎年恒例の「SFセミナー」。昼間はお茶の水の全電通労働会館ホール、夜の合宿は本郷の鳳明館森川別巻にて。
 私は昼間の部だけ参加しましたので、そのレポートを。

1コマ目:クロスメディアの作家たち

 ウルトラマンを素材にした書き下ろし『ウルトラマンデュアル』を発表した三島浩司さん、テレビアニメのノベライズ『ぼくらの〜alternative〜』シリーズでデビューし、ラノベ作家として活躍している大木蓮司さん(本名:前島賢名義ではレビュアーや評論家としても)、同じくテレビアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』のノベライズを手がけている吉上亮さんのお3方に、鈴木力さんが訊く。
 それぞれの作品についての突っ込んだ質問、設定資料は作るかどうか、映像表現と文章表現の違いをどうとらえているか、など。
 映像と小説との違いについての問答が興味深かった。三島さんは「(なぜそういう展開になっているのか、戦いの理由はなどという)理屈づけの部分をふくらませてしっかり描きこむところは、映像よりも小説の得意とするところ」と言い、大木さんは「(原作を離れて)無責任に風呂敷を広げるのは得意」と。吉川さんは「戦闘シーンの描写はするにしても、そこに至るまでの登場人物の心理的過程が書ききれるところが文章の力かと思う」とおっしゃってました。

2コマ目:『三体』以後の中国SF

 活躍中の若手作家、スタンリー・チェン(陳楸帆)さんが語る中国SFの現状。聞き手は中国文学の立原透耶さん。
 『三体』とは劉慈欣著/ケン・リュウ英訳で、昨年、米国のヒューゴー賞長編部門を受賞した現代中国SF。このことからもわかるように、今、中国SFが注目されていますが、スタンリーさんが語る現状は予想を上回る盛況ぶり。大勢の作家とその作品の紹介に心が躍りました。

 写真:檀上、右から2人目がスタンリー・チェンさん。左端が立原透耶さん。

3コマ目:SFファンタジー翻訳教室

 西崎憲さんが先生(本人は「先輩」と呼んでもらいたいとか)となって、英語の小説を日本語に訳すコツをきわめて具体的に教える。教材はロバート・シェクリイのショートショート「最後の五分」。
 7人の生徒さんたちの訳文を検討しながら、小説の英語文の注目点を語ってくださったのですが、とても面白く、有益。特に「冠詞に注意すれば、誤訳の大半は防げる」という指摘には、大いに納得させられました。

4コマ目:會川昇インタビュー『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』~ヒーロー・伝奇・SF

 長いタイトルですが、アニメの脚本家、小説家として活躍する會川さんのこれまでを、日下三蔵さんが聞いてゆく。70年代なかばから80年代なかばにかけて、1人のティーンエイジャーがどのようにして筋金入りのオタクになったかという話が中心ですが、語り口も内容も、じつに面白い。面白すぎるほどであっという間に時間が経ってしまいました。
 それにしても中学生の會川さんに、大学生の池田憲章さんがあのように絡むとは! 教育実習にやって来た池田さん、最後の時間に、「今日は文学の可能性について語りたい」と言って、筒井康隆さんの「バブリング創世記」を読み上げたのだそうですよ。強烈なエピソードだ。