惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

『日活アクション無頼帖』

2007-12-25 20:55:04 | 本と雑誌
 今年最後の締切原稿を送ってから、自転車で吉祥寺へ。これもたぶん今年最後の本の買出し。
 表題の『日活アクション無頼帖』(山崎忠昭著、ワイズ出版)は堀晃さんの日記で知って、ネットで買った本。タイトルが分かっていればネット書店での購入が便利ですが、どんな本が出ているかを探るにはやはり本屋さんの棚を見て歩くのがいちばんです。今日はジョウ・シュン+フランチェスカ・タロッコ『カラオケ化する世界』(松田和也訳、青土社)など4冊を購入。

 さて、『日活アクション無頼帖』ですが、これは無類に面白い。特に日活アクション映画や60年代の映画関係文化に興味のある人にはたまらないはずです。
 著者の山崎忠昭さんについて私はよく知らなかったのですが、生まれたのは1936年、大伴昌司さんや南山宏さんと同い年なんですね。早稲田大学では映画研究会「稲門シナリオ研究会」に所属し、大和屋竺さんらと8ミリ映画を創り、大学院中退後、日活映画などのシナリオライターを務めた。代表作は鈴木清順監督・宍戸錠主演の『野獣の青春』、岡本喜八監督・仲代達矢主演『殺人狂時代』など。
 60年代後半からはテレビに活躍の場を求め、『ハリスの旋風』、『巨人の星』、『ひみつのアッコちゃん』、『あしたのジョー』、『ムーミン』、『ルパン三世』などのアニメ、〈恐怖劇場アンバランス〉シリーズの『死骸を呼ぶ女』(監督:神代辰巳)の脚本やバラエティ番組の台本などを書いたらしい。

 驚いたのは、この人がごく初期の熱心なSFファンだったこと。本書を編纂した高崎俊夫さんによれば、大学の卒論(文学部演劇科)のテーマは「1950年代のアメリカSF小説」。神保町の古書店でハインラインやブラッドベリ、ブラウンらのペーパーバックスを買い漁り、偏愛していたのはスタージョンだったという。おそらく〈SFマガジン〉創刊以前の話でしょう。
 1999年に亡くなられて、今はもう会えないのですが、可能ならばぜひともお話を伺ってみたかった。

 本書に出てくるエピソード(若きジュディ・オングを中平康監督が諌める話とか)はどれも興味津々なのですが、中でも嬉しかったのは虫明亜呂無さんの肖像がくっきりと描かれていること。私のスポーツ愛好癖は、たぶんこの人の著書で植え付けられたものですが、今、考えてもあんなに分かりやすく、熱く、スポーツを語る人はほかになかった。その後も、まだ並ぶ人はいないでしょう。晩年の困窮について、石川喬司さんから少しお話を伺ったことがありますが、ここに描かれた姿はとてつもない怪人でありながら、誠意と熱情の塊を感じさせる。
 凄い人たちがひしめいていた時代と場所があったんだなあ、と思ってしまいました。


火星と満月

2007-12-24 20:11:03 | 季節
Mars0712  今夜は満月。午後5時ごろ、東の空に昇ってきた月を見ると、昨日は火星の右上にあったのに、今日は位置を変えて左下になっています(写真、右上の小さな光が火星です)。
 1日に50分ずつ月の出が遅れるということは、星空の動きにも遅れをとるということなんですね。そのせいで、火星との位置関係が変わる。ダイナミックな動きがよくわかりました。

 それにしても、地球の裏側のどこかでは月と火星が再接近した場面が見られたわけですね。うらやましい。

 火星は2年2カ月ぶりに再接近中ですが、国立天文台では今夜と明晩、火星のライブ中継をしていて、今、私はその中継映像を見て、説明を聞きながら、この日記を書いています。大気の影響で薄いオレンジ色の火星はプルプル震えて見えます。
 火星……私が存命中に人があそこまで行くことができるかなあ。


有馬記念

2007-12-23 21:00:41 | 競馬
 2日続けて夜のお出かけがあり、師走らしい慌しさを味わいました。
 しかし、これで年内の外出予定は終了。あとは無事に年を越せるよう、残った仕事を片付けてゆかねばなりません。締切をもうひとつクリアすれば、年賀状や剪定や掃除にとりかかれるぞ。

 今日の有馬記念。マツリダゴッホがなんだか余裕で勝利しましたね。
 私は、ダイワスカーレット(本命)とダイワメジャー(対抗)としていたのですが、2位と3位。マツリダゴッホさえいなければぴったりだった……などと言っても始まりませんが、しかし、まずまずの結果でほぼ満足しています。昨日と今日の予想はいいとこいってたんですよねえ。

 今夜の月は14夜。雨上がりの東の空にぽっかりと浮かんでいました。
 そして、その後に従うように、現在地球に接近中の火星が赤く、明るい姿を見せました。
 「今日は東の空がにぎやかだな」と思いながら散歩をしていたら、すぐに雲が広がり月も火星も隠れてしまいました。でも、この時期の夜空は本当にきれい。


テリトリー?

2007-12-20 21:01:05 | 日記・エッセイ・コラム
 西池袋(地下鉄要町駅近く)のミステリ文学資料館へ。
 SF雑誌以外に発表された気になる短篇小説をチェックするのに、このところ毎年末、ここを利用しています。中間小説誌が全冊揃っているのがありがたいし、(これは申し訳ないことなのですが)利用者がほとんどいないので、ほぼ独占して使えるので、とても具合がいいのです。今日も昼前から閉館の午後5時まで、閲覧者は私1人でした。
 途中で中年男性が1人、足を踏み入れましたが、これは様子見というか、どんなところか確かめる程度で開架書庫を見て回っただけでした。

 遅めの昼食は、去年と同じくスープカレーの「心」西池袋店。鶏団子とネギのカレーを食べました。美味しい。

 昼食を終え、再度ミステリ資料館へ向かって歩いていると、突然、「あれっ! どうしてんですか?」という声。
 目の前に、空想小説ワークショップのメンバー・S田さんが立っていました。セーラー服の娘さんと一緒。どこかへお出かけしようとしているところのようです。

 突然、意外な人と出会ったので戸惑っていると、「私の家の近くで、何してんです?」と、さらに問い詰めてきます。そういえば、S田さんは要町にお住まいでした。
 「え……いや、すぐそこで、ちょっと調べものを」と、弁解調になってしまったのは、こちらが相手のテリトリーに足を踏み入れてしまったという負い目を感じたせいでしょうか。
 (負けたかなあ)と思いながら、別れたものでした。


『サンタクロースにインタビュー』

2007-12-18 20:34:23 | 本と雑誌
 やっと原稿をひとつ上げたと思ったら、すぐに次の仕事に取り掛からねばならない。年末進行は大変です。

 10年あまり前に『大きなケストナーの本』(マガジンハウス)というタイトルの本が出ましたが、その流儀でいけば『サンタクロースにインタビュー 大人のための子どもの話』(泉千穂子訳、ランダムハウス講談社)は「小さなケストナーの本」とでも呼びたくなります。20代なかばから30前後までの間に、ケストナーが新聞や雑誌に書いた短文を中心にしたアンソロジー。
 『大きな――』がケストナーの一生を、彼のエッセイや詩で構成するような内容だったのに比べると、こちらは少年時代のケストナーをうかがわせるような編集になっています。

 ただ、これを短篇集として読んでしまうと、どうなんでしょう? 「なんだ、ケストナーってそんなに面白くないじゃないか」ということになってしまいはしないかと心配。
 『大きな――』がそうであったように、この本もケストナーその人を知るための副読本のような位置づけをするのがいいように思います。

 だから、順番としては――

  1. 『エミールと探偵たち』や『飛ぶ教室』でケストナーの素晴らしさを知る。
  2. ケストナーの伝記(クラウス・ゴードン『ケストナー ―ナチスに抵抗し続けた作家―』など)を読む。
  3. 『大きなケストナーの本』や、この『サンタクロースにインタビュー』を読む。
 となるのが、いちばん。『大きな――』も、この本も、ケストナーの生涯と各文章とを解説した文が貧弱で、これだけではちょっと、その良さが伝わってこないのではないかなあと思いました。