表題の『日活アクション無頼帖』(山崎忠昭著、ワイズ出版)は堀晃さんの日記で知って、ネットで買った本。タイトルが分かっていればネット書店での購入が便利ですが、どんな本が出ているかを探るにはやはり本屋さんの棚を見て歩くのがいちばんです。今日はジョウ・シュン+フランチェスカ・タロッコ『カラオケ化する世界』(松田和也訳、青土社)など4冊を購入。
さて、『日活アクション無頼帖』ですが、これは無類に面白い。特に日活アクション映画や60年代の映画関係文化に興味のある人にはたまらないはずです。
著者の山崎忠昭さんについて私はよく知らなかったのですが、生まれたのは1936年、大伴昌司さんや南山宏さんと同い年なんですね。早稲田大学では映画研究会「稲門シナリオ研究会」に所属し、大和屋竺さんらと8ミリ映画を創り、大学院中退後、日活映画などのシナリオライターを務めた。代表作は鈴木清順監督・宍戸錠主演の『野獣の青春』、岡本喜八監督・仲代達矢主演『殺人狂時代』など。
60年代後半からはテレビに活躍の場を求め、『ハリスの旋風』、『巨人の星』、『ひみつのアッコちゃん』、『あしたのジョー』、『ムーミン』、『ルパン三世』などのアニメ、〈恐怖劇場アンバランス〉シリーズの『死骸を呼ぶ女』(監督:神代辰巳)の脚本やバラエティ番組の台本などを書いたらしい。
驚いたのは、この人がごく初期の熱心なSFファンだったこと。本書を編纂した高崎俊夫さんによれば、大学の卒論(文学部演劇科)のテーマは「1950年代のアメリカSF小説」。神保町の古書店でハインラインやブラッドベリ、ブラウンらのペーパーバックスを買い漁り、偏愛していたのはスタージョンだったという。おそらく〈SFマガジン〉創刊以前の話でしょう。
1999年に亡くなられて、今はもう会えないのですが、可能ならばぜひともお話を伺ってみたかった。
本書に出てくるエピソード(若きジュディ・オングを中平康監督が諌める話とか)はどれも興味津々なのですが、中でも嬉しかったのは虫明亜呂無さんの肖像がくっきりと描かれていること。私のスポーツ愛好癖は、たぶんこの人の著書で植え付けられたものですが、今、考えてもあんなに分かりやすく、熱く、スポーツを語る人はほかになかった。その後も、まだ並ぶ人はいないでしょう。晩年の困窮について、石川喬司さんから少しお話を伺ったことがありますが、ここに描かれた姿はとてつもない怪人でありながら、誠意と熱情の塊を感じさせる。
凄い人たちがひしめいていた時代と場所があったんだなあ、と思ってしまいました。