金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

強過ぎる中国は困りものだが、弱い中国も困りもの

2015年07月28日 | 投資

中国は中々厄介な国だと思う。経済状態が良くて国力が伸びてくると、世界中の資源を買いまくり、世界的な食糧・コモディティ価格の上昇を招く。力を着けると軍事的なプレゼンスが高まり、日本を含む近隣諸国と島嶼問題で緊張が高まる。強過ぎる中国は厄介だ。

しかし世界で2番目の経済大国になった中国の経済成長が急減速すると世界経済に与えるマイナス影響はかってないほど大きくなっている。

昨日中国株(上海市場)は8.5%下落した。1日の下落幅としては、2007年2月以降の大暴落だ。直接の原因は当局が証券会社による証拠金取引へのチェックを強化したことによると報じられているが、背景には中国経済の成長鈍化に対する投資家の懸念がある。

参加者が中国人に限られている上海市場は思惑で動く市場だ。中国株は6月初旬に高値を付けたが、市場を押し上げたのは「中国株は割安だ」という国営メディアの報道を信じて株式市場に飛び込んできた個人投資家だった。そして彼等は今大きな含み損を抱えている。

先週末発表された購買マネージャー指数は15カ月ぶりの低い水準だった。もう一つ信頼感に欠ける中国の経済統計の中で、購買マネージャー指数は比較的信頼できるデータだろう。株価の急落が実体経済にじわりと影響を及ぼし始めている。

中国株の下落を受けて昨日の日経平均は1%近く下落。米国でもダウは0.7%以上下落した。この地合いをうけてシカゴ日経平均先物は200ポイントほど下落しているから、今日の東京市場も少なくとも寄り付きは弱いだろう。

だが中国の景気減速は悪い話ばかりではないだろう。これ以上の景気減速を懸念する中国政府が日中関係の改善を急いでいるという観測がある。日経新聞によると先ごろ北京を訪問した谷内国家安全保障局長は大歓迎を受けた。中国政府には事務レベルのみならず、首脳レベルでも関係改善の歯車を回そうという動きがあるようだ。

一方日本では安保関連法案の国会通過を巡って支持率が急低下した安倍内閣も中国との関係改善で支持率回復を狙う可能性があると私は考えている。だがそのあたりのことがはっきりしてくるのは、8月に予定されている安倍首相の戦後70年談話とそれに対する中国の反応など少し先になりそうだ。

中国の景気減速を日中の政治家はうまく利用できるだろうか?

日本の株式市場は当面中国の動きと米連銀の利上げ観測、米国企業の決算発表などを見ながらもう少し下げると私は踏んでいる。

★   ★   ★

最近出版した電子本

「海外トレッキングで役に立つ80の英語」

「インフレ時代の人生設計術」 B00UA2T3VK

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トレーダーの予想は連銀の金利引上げ後ずれ

2015年02月06日 | 投資

今朝(2月6日)のWSJの記事で目を引いたのが、トレーダーたちの間で米連銀の政策金利引上げ時期が今年の終わり頃から来年になるではないか?という観測が広がっているというものだった。

下のグラフはFED Funds rate先物価格から割り出した金利引上げ予想時期だ。

 

少し前までは大方が今年の中頃には米連銀が金利引上げに動くという予想が多かった。ここにきて金利引上げが後ずれすると予想する理由は、金利引上げで更にドル高が進むと米国の輸出企業のダメージが大きくなるので、連銀は金利引上げを遅らせるというものだ。

また原油価格が多少反発したとはいえ、低水準にあることも大きな理由だろう。

もし雇用統計や賃金統計の数字を踏まえて、連銀の金利引上げ時期が後ずれするという見方が投資家全体に広がってくると、より高いリターンを求めて、資金が米国からアジアへ動く(12月に米国に還流した資金が1月にはまたアジアに戻っている)流れが加速する可能性が高い。

お金の流れは眼には見えないが、金利の差を求めて目まぐるしく変わる。それに乗るのも一興、傍観するのも一興である。

 

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昨日は原油急落、でも底は近い?

2015年02月05日 | 投資

昨日(2月4日)は4日連続で急騰していた原油価格が大きく下落した。米国エネルギー省の発表によると、クルード・オイルの在庫は先週6.3百万バレル積み上がり、413.06百万バレルに達したという。これは1982年に記録が始まって以来の最高水準だ。この在庫水準の高さに、原油価格は底値を付けたと判断していた投資家は驚き、先物価格は急落した。

下落幅は8.7%と昨年11月28日以降では最大となった。引け値は1バレルあたり48.45ドルだった。先週の安値は過去6年間で最低の43.58ドルだったから、もう少し下がる可能性はあるだろう。

原油価格の急落で、米国の石油会社は減産体制に入ったので、原油の供給量は予想より早いペースで低下すると見る筋もある一方、今年前半は供給過剰が続くと見る筋もある。

 このチャートは過去5年ほどのクルード・オイルの先物のローソク足である。

このチャートは東証に上場されている原油ETF(2038)のチャートだ。

このETFの価格は原油価格の動きの2倍で動くように設計されている。先週取引高が急増したのは、原油が底値だ!というスペキュレーションで買いを入れた投資家が多かったためだろう。

残念ながら我々投資家に完全に底値を予想する能力はない。相場の格言は「まだはもうなり もうはまだなり」と教えている。一番安い時に買うことはできなくても、そこそこの値段で仕込むことができれば良い、と考えるならこのあたりは買い時と言えそうだ。

 

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果報は旅して待った11月

2014年11月26日 | 投資

もし「市場コメント」等を期待して、私のブログにお立ち寄り頂いている読者の方がおられるとすると、ここしばらくはエントリーがなくて、ご期待を裏切り続けたことになる。11月2日から19日までネパールを旅しており、その後も旅の記録の整理等で市場はほとんど見ていなかったのである。

ブログは書かなかったけれど、11月の運用成績は中々好調だった。ネパールの前に台湾から帰ってきたのが10月29日の夜。30日は日銀が予想外の金融緩和策を打ち出した。かなりの円安が予想されたが、3週間近く旅に出るので、先物で大きなポジションを取る訳にもいかず、米国株ETFを若干追加購入してネパールに旅立った。ネパールをトレッキングしている間に円はあっというまに10円近く下落し、ちょっとした小遣い稼ぎ(含み益)になったという訳だ。

サプライズといえば、カトマンドゥに戻って日本のニュースを見たとき、飛び込んできたのが、安倍首相による衆院解散(予想)と高倉健さんの死亡ニュースだった。私見では「日銀の大規模金融緩和とセットで消費税引き上げ」と読んでいたが、これは全くの外れだった。

うがった見方をすれば、日本経済の状況は予想外に悪く、消費税引き上げはおろかこのまま行くと景気低迷が続くので、今の内に解散総選挙をして、安倍政権の長期化を図ったと考えることもできそうだ。

一方米国経済はかなり好調である。昨日発表された第3四半期のGDP成長率は市場予想を上回る3.9%だった。米国ではクリスマス商戦が始まっている。全米小売業協会の予想では買い物客数は、前年並みの1.4億人だが、財布の紐は緩み、売上高の伸び率は3年前(2011年)の4.8%に次ぐ4.1%になるだろうということだ。

雇用の改善、賃金の上昇、ガソリン価格の下落などで消費者の財布の紐が緩んでいるのだ。もっとも東部地区の寒波など不安要因はあるが、私は今年のクリスマス商戦は期待して良いと判断している。

以上のことを総合すると先進国では米国景気の堅調さが目立ち、高値警戒感から多少ドルが売られることはあっても、しばらく円に対して強いまま推移するのではないだろうか?

ということで、旅をして持ち越したポジションはしばらくキープしておきたいと思っている。

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アメリカ経済の5つのリスク

2014年10月19日 | 投資

先週金曜日(10月17日)の米国株式市場は大幅に上昇した(ダウは263ポイント(1.6%)の上昇)。上昇したといっても、1カ月前に較べると、ダウは885ポイント(5.13%)下落している。少し前までは「新しいゴルディロックス経済の到来」などという楽観的な言葉を米紙で見かけたが、今では懐疑的なムードが支配的なようだ。

CNBCに「米国経済が脱線する5つのリスク要因」という記事が出ていた。

5つのリスクとは「世界的な景気減速」「長期金利の上昇リスク」「原油価格の下落とインフレ率の低下」「急速な物価上昇」「株価下落」である。このリスクは日本経済が抱えるリスクと基本的には同じだ。もっともGDPの輸出依存度は米国が10%程度(CNBCの記事による)で、日本は14%程度だから世界経済の鈍化が経済に与える影響は日本の方が大きい。

原油価格とインフレは関係が深い。原油価格の低下は短期的には消費者にプラスに働くが、原油価格の低下が続くと物価上昇率が危険水域に入る可能性がある。キャピタル・エコノミクスのチーフエコノミストによると「インフレ率が1.5%まで落ちても問題はない(8月は1.7%だった)が、もし0.3%まで低下すると問題だ」と述べている。このように物価上昇率が連銀がターゲットする2%より大きく落ち込むリスクを指摘する声がある一方食料品や原油価格の予想外の急上昇懸念を指摘する声もある。

例えば米国の大平原地帯では、何十年ぶりという旱魃が起こり、食肉価格を上昇させている。現在のところ海外からの輸入である程度価格は抑えられているようだが、世界的に異常気象が目立っているので、どこで何が起きるか分らないというリスクはある。

このところの株価下落については「一時的なもので大きな懸念はない」とする声が多いが、エボラ熱の感染やイスラム国問題が持続すると株価が一段と下落するリスクは残っている。株価の大幅な下落は、富裕層の消費マインドを萎縮させ、景気の悪化につながるだろう。

以上のようなリスクは別に先週急に出てきたものではない。株価の急落でそれまで軽視させていたリスクに改めて焦点が当たっただけの話ではある。

さて日本ではこれに加えて私は「小渕経産相の政治資金問題に絡む辞任」としれに続く安倍政権の不安定化や「消費税再引き上げ判断」問題がある。消費税再引き上げに踏み切ると当面の景気を冷やす可能性が高いし、再引き上げを見送ると財政規律の弛緩とみなされ、国債価格が下落(長期金利の上昇)するリスクがある。いずれにせよ株価には悪影響を及ぼす可能性が高い。

日米経済ともリスクを抱えているが、相対的には今の時点では日本の方がリスク要因は多いのではないか?と私は考えている。それが正しいかどうかは市場に聞くしかないが。

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