金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

同質化するヘッジファンドとプライベートエクイティ

2006年02月03日 | 金融

ヘッジファンドとプライベートエクイティの同質化は気になっていたことだが、最近のエコノミスト誌が記事にしているのでポイントを照会しよう。

  • 奇妙な名前と法外に高いフィーを別にすれば、今までは通常ヘッジファンドを容易にプライベートエクイティから区別することができた。大部分のヘッジファンドは流動性の高い市場でリターンを追及していた。対照的にプライベートエクイティの強みは企業の外科手術にある。これはより長い時間がかかるのでプライベートエクイティはその投資家に対して出資金を引き上げるのに数年待つことを求めている。
  • 過去3年間ヘッジファンドのリターンは買収ファンドに見劣りするどころか退屈な株式市場のベンチマークにさえ見劣りしている。モルガンスタンレーによれば昨年ヘッジファンドよりプライベートエクイティの方がネットの資金流入が多かった。このことからヘッジファンドマネージャー達は中型株などより流動性の低い市場に向かうことを強いられている。この結果時としてヘッジファンドはプライベートエクイティファンドが自己の領域と考えている領域に侵入することがある。
  • この問題は米国の若者向けファッションブランド・トミーフィルフィギャーで起こった。同社を巡ってあるヘッジファンドとあるプライベートエクイティが争っている。去る12月に同社は約16億ドルでロンドンの買収ファンド・アパックパートナーズに買収されることを合意しJPモルガンから価格の妥当性に関する意見書を得ていた。しかし同社の株の6.3%を保有するソーウッドキャピタルというヘッジファンドが「公開企業の株主の負担で同社の事業再生が行なわれ買収ファンドはその成果を奪い取ろうとしている」として証券取引委員会に提訴をした。
  • 更にこの手の抗争は起こりそうだ。ソーウッドのように引く手あまたのヘッジファンドはより流動性の低い市場で取引を行なう余地を得るため投資家に最低でも2年間資金を寝かせることを納得させることができる。長いロック・イン(資金を引き出せない期間)を持つファンドは増加すると思われる。2月1日までにロック・インが2年以下のヘッジファンドは証券取引委員会に登録しなければならなかったからだ。
  • 同じような資産クラスをヘッジファンドとプライベートエクイティファンドが追い求めることは必ずしも摩擦を引き起こすとは限らない。協調してディールを行なうこともある。しかしいずれにせよ両社の境界はぼやけつつある。それはそれで結構だ。しかし同じ土俵でより多くの投資家が獲物を追い求めるので、リターンはひどく低下するかもしれない。もしそうであればますます高い運用報酬を正当化することが難しくなるだろう。

この両ファンドの同質化ということは資産クラス毎に投資限度を設けている様な機関投資家の場合悩ましい問題となるだろう。ただ世界的な潮流を見ると最大の機関投資家である確定給付型年金基金は閉鎖される傾向にある。つまりIBMの動きに見られる様に確定拠出型年金への移行が又加速しているのだ。スポンサーを求めてファンド組成者達がますます日本を狙うかもしれない。日本の年金基金等が同質化するファンドの犠牲者にならないことを希望する。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする