日本でも長期金利がジワリと上昇してきた。私はこの金利上昇は米国の金利高に追随して起きている面が強いと見ている。ではどうして米国で長期金利が上昇しているのか?
金利が上昇し始めたのは3月中旬で、当時1.25%だった2年もの金利は今では2.6%まで上昇している。金利が上昇した理由の一つはサブプライム危機で投資家がセーフハーバーとして米国債に資産を移していたため、米国債が買われ過ぎ利回りが低下し過ぎていたのだ。ところが3月中旬のベア・スターンズ救済劇辺りから、金融危機は峠を越したという楽観論が投資家の間に広がり、国債を売って株式などに資金をシフトするという動きが活発になった。このため債券価格が下落し、イールドが上昇しているのだ。
メリル・リンチが最近世界のファンドマネージャーに行った調査によると、8割の投資家は来年の長期金利は今年より高いと予想している。
またドル金利先物は今年の後半に連銀が金利を引き上げる可能性があることを示唆している。しかし何時連銀が金利を引き上げるか?という点については専門家の間でも意見が分かれている。
FTによるとウエルス・キャピタル・マネジメントのミューラー・上級ポートフォリオ・マネージャーは「連銀は今年は金利を引き上げないだろう」と判断している。というのは、景気を刺激するため米政府は税金の還付をおこなっているが、この還付金効果は向こう2・四半期続くと考えられる。連銀はこの「カンフル剤」が切れた後、景気が強いかどうか判断するだろうというのが、彼の判断根拠だ。
水曜日に発表された米国の4月の消費者物価指数は、ヘッドライン・インフレ率(総合インフレ率)は、先月0.2%上昇したが、ボラティリティの高い食料とエネルギーを除いたコア・インフレ率は0.1%だった。これを受けて金利上昇は一休みした。
因みに米国と日本の現在の金利水準は、3ヶ月もので米国が1.81%、日本が0.59%、10年もので米国が3.92%、日本が1.70%だ。
日本だけの資金需要や物価上昇状況を見ると、長期金利は上昇し過ぎていると私は判断している。米国で債券から株への資金シフトが一段落すると、少し金利は低下するだろう。これに伴って日本の長期金利ももう少し下がると私は判断している。
評論家はこのような状態を「今後金利は経済成長とインフレに関する思惑を巡って、月が満ち欠けするように~wax and wane~くるくる回るだろう」と述べている。もっとも月の満ち欠けは予測可能だが、金利の上下を予測することははなはだ困難であるという違いはあるが・・・・・。