金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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原油高で日本の炭鉱見直されるか?

2008年05月22日 | 社会・経済

原油高に連動して、石炭価格も高騰した結果、日本の石炭が採算ラインに乗ってきたという話をニューヨークタイムズ(NT)で読んだ。毎月ある業界誌に寄稿しているが、今月のテーマは「原油問題」と決めたので、エネルギー関連の記事を跋渉していたところNTで北海道・美唄の話を見たという次第だ。埋蔵量が多いとは思われない北海道の炭鉱まで頼り出すところは、どこか少子高齢化が進む日本の労働市場を彷彿とさせる。つまり仕事によっては一度第一線を退いた(時には退かせた)人まで、戦力として呼び戻すところが炭鉱の復活と似ているのだ。さて記事のポイントを拾っておくと次の通りだ。

  • 日本の石炭産出量は1961年がピークで、662の鉱山が55百万トンの石炭を産出していた。昨年はわずかに8つの鉱山が1.4百万トンを産出しているに過ぎない。
  • 日本の石炭は数十年間トン当たり100ドル以上したため、高過ぎて競争力がなかったが、世界の石炭価格がこのレベルまで高騰してきた。オーストラリアのニューキャッスルから輸入される火力発電用石炭は03年にはトン当たり23.25ドルだったが、今月16日決済分は134ドルに上昇している。
  • 北海道電力は今年は国内炭の購入を倍の11万トンに引き上げるだろうと発表している。また三菱マテリアルは18年振りに国内炭を使用するだろうと発表している。
  • 北海道電力は地域経済を支えるため、過去毎年3万トンの石炭を美唄の炭鉱から購入してきた。国内炭の需要が強いので、石炭鉱脈探しを始めているのが北菱産業埠頭株式会社だ。この会社は三菱マテリアルの子会社。ところが長年鉱脈探しなどやっていないので、専門家がいなくて苦戦している。
  • 暗くて危険な深い地中で採掘する労働者がいないこともネックだ。また環境保護の観点から「ストリップ マイニング法(サイドキャスティング法)で採掘することも難しくなっている。
  • そこで注目を浴びているのが、地中で石炭を液化させ、石油のように汲み出す方法だ。もっともこの方法が実現しても、日本のエネルギー自給率が大きく改善することはない。国内炭は石炭需要の.8%を満たすに過ぎないからだ。とはいうものの、美唄を含む空知地方には60万トンの石炭が眠っていると推定されるので、現在の産出ペースなら30年間は使うことができる。

もっとも石炭採掘が採算ラインに乗ってきても、破産で有名になった夕張市などで雇用状況が改善するかというと楽観的ではない。既に述べたようにこれからの炭鉱は極めて資本集約的だからだ。とはいうもののこの地方には明るい話題だろう。

原油高騰は世界のあらゆるところで、新しいビジネス機会を生み出す。禍福はあざなえる縄の如し・・・という柔軟な姿勢でものを見ることが出来ると、新しい投資機会が見つかるかもしれない。

コメント (1)
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