雨の土曜日の朝、ネットで英字新聞を繰っていたら、日本の経済団体が話題になっていた。特にビッグ・イベントがあった訳ではないと思うが、一つは経団連の御手洗会長がFTのインタビューに対して答えたもので「表題は経団連会長、柔軟な労働市場を歓迎」というものだ。
御手洗会長の話は「日本企業は利益を上げても、賃上げを行っていないではないか?」という政治家やマスコミの批判に答えたものだ。彼の主旨は「大企業は06年に1.7%、07年に1.8%、そして今年1.9%の賃上げを行っている」「経団連は利益を上げている会社に賃金を上げることを求めている」というものだ。
また御手洗会長は全体としてサラリーが停滞している理由は「生産性の低いサービスセクターにおける低賃金」「年功序列型賃金制度における高年齢者の退職」によるとしている。
政治家やマスコミは「90年には5分の1以下だった非正規雇用者が07年には3分の1を超えるようになった。これが所得格差を拡大し、若者の力と希望を失わせている」と主張している。これに対して御手洗会長は「パートタイム労働の増加で、産業の空洞化を防ぐことが出来たし、女性や高齢者に働く機会を与えた」と反論している。
ところでこの非正規雇用者の問題について、もう一つの経済団体・経済同友会は異なった見解を示している。同じ時期に出たエコノミスト誌の記事は「経済同友会の桜井代表幹事は『臨時社員もパート・タイマーも、同じ仕事をしている限りフルタイム雇用者と同じ給料を支払われるべきである」と主張している」と紹介している。
私も「同一職務・同一賃金」をベースにするべきだと考えているので、桜井氏の意見を支持したい(ただし私は桜井代表幹事の意見を直接読んでいないので、これ程明確に非正規雇用者の権利を擁護しているのかどうかは確認していない。)
余談になるけれど、桜井氏はリコーで欧州勤務が長かった人だ。一方経団連の御手洗会長は米国勤務が長かった人だ。欧州は同一労働・同一賃金の思想が強いところだ。二人の勤務地の違いがこの問題に対する見解の相違に影響を与えているのだろうか?