金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

アメリカ、海外石油依存症を改め始める

2008年05月20日 | 社会・経済

米国が海外の石油依存を減らそうと動き出した。これは1977年以来のことである。FTによると昨年の米国の海外石油依存率は58.2%だったが、今年の最初の3ヶ月の依存度は57.9%に低下している。米国のエネルギー統計局によると、米国の海外石油依存度は現在の約60%から2015年には50%に減少し、2030年には54%に増加するという見込みだ。

米国のエネルギー情報管理局によると、国民が高い石油価格に対応しだしたことと昨年制定されたエネルギー独立・保障法(Energy Independence and Security Act)の影響で海外石油への依存度が低下し始めた。

私は米国の海外石油依存が低下し始めた最大の要因は、昨年来の原油価格の高騰であると考えている。しかし原油価格の高騰に歩調を合わせて、欧米では将来の原油の供給に対する懸念が高まっている。

1950年代後半にマーティン・キング・ハバートが「ピーク・オイル学説」を唱え、世界の石油産出量は1965年から70年にピークを迎えると予想した。一方多くの石油業界の幹部、政治家、アナリスト達はこの学説は、原油埋蔵量を低く見積り過ぎているなどの理由で否定してきた。しかし最近の原油産出量の減少を示す幾つかの出来事はこの学説を後押ししているように見える。このことはもう少し調べてからブログに書こう。

ピーク・オイル学説によると、ある油田の原油の産出量は釣鐘型になる。つまり少ない産出量からスタートし、産出量がピークに達すると今度は登ってきた坂を下るようなペースで産出量が低下していく。

今世界の幾つかの大油田で産出量の減少が始まっていること、そしてそれに替わる大油田の発見がないことは、石油資源の将来が見え始めたということかもしれない。

世界の大油田の中にはメキシコのカンタレル油田のように減退状況が日本語のホームページでも簡単に見られるもの(石油天然ガス・金属鉱物資源機構が「カンタレル油田の急激な減退とカルデロン新政権の政策動向」というレポートをHPに掲載している)ものがある。一方世界最大のサウジアラビアのガワー油田のように、政府が埋蔵量に関する情報を極秘にしているところもある。このため石油資源の埋蔵量を把握することは、極めて困難だ。だが米国か英国が最も確かな情報を持っていることは確かだろう。その米国が海外石油依存度合いを減らそうということは、石油埋蔵量に関する悲観的な情報を押さえているのではないかと私は推測している。

話は飛ぶが私は日産・ルノー連合が「電気自動車」の開発に力を入れ出したのは、カルロス・ゴーン会長が外国人であることと無関係ではないと考えている。これは私の全くの推測なのだが、五ヶ国語に堪能なゴーン氏(ブラジルとフランスの二重国籍を持っている)は、日本人経営者より石油問題に知見が深く、石油価格の高止まりが続きそして遠くない将来枯渇することを予想している・・・・・といえば考え過ぎだろうか?それともハイブリッド車でトヨタ・ホンダに遅れを取ったので、完全電気自動車で巻き返しを図っているだけなのだろうか?

石油枯渇は大問題だが、これを逆手に取って色々な商売が出てくるだろう。「人間というものはしたたかな生き物である」と言える日が来れば良いのだが・・・・

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金融機関は所詮は人事マンの世界なのか?

2008年05月20日 | 社会・経済

5月は3月決算の会社にとって大きな人事の季節である。6月の株主総会の役員交替を前にして、新旧役員交替の発表があるからだ。

ある金融機関の新任役員人事を見ていて、私は人事部出身者が多いと感じた。元々その金融機関は人事関係者(つまり人事部と組合)が、組織の階段を登る傾向の強い会社だが特にその傾向が強くなっていると感じた。

この問題に関して私はある直感的な仮説を持っている。それは「伸びる会社や業界ではプロダクツ出身者が偉くなり、縮む会社や業界では人事出身者が偉くなる」というものだ。縮む業界では「人減らし」が大きな経営課題になるため、腕を振るう(あるいは鉈を振るうというべきか)人事部の評価が上がる・・・というのが仮説の根拠なのだが、この仮説が帰納的に正しいかどうかはもっとデータを集めないと分からない。

ところでFTを読んでいたら、米国の金融界でも私の仮説を傍証するような出来事があることが分かった。

それは3月にベア・スターンズを救済買収したJPモルガンのダイモン会長が、競争相手や取引先にベア・スターンズの職員の採用を働きかける手紙を個人的に書いているという話だ。いや原文のpesonallyを「個人的に」と訳したがこれは間違いだろう。始めはJPモルガンは会社としてベア・スターンズの職員の解雇を進めながら、会長は人道的観点から再就職を斡旋しているのか?と思ったが、これは間違いだった。つまりpersonallyは「自署して」と解釈するとすっきりする。He signed the contract personallyという例文あるが、これは「彼は契約書に自らサインした」という意味。

話を戻すとダイモン会長は、(恐らく部下や秘書が作成した)個人名の手紙を競争相手や顧客にまで送って再雇用策を進めているということだ。

FTはこの動きを「思いやりではなく抜け目のないやり方」だと書く。この文章は英語の方が面白い。The move is not soft-hearted but hard-headed.ソフト・ハートは「思いやり」でハード・ヘッドは「抜け目のなさ」だ。ソフトとハード、ハートとヘッドの対は覚えておいて損はなさそうだ。

どうして抜け目のないやり方かというと再就職斡旋が上手く行くと離職者は自分を首にしたJPモルガンに対する不快感を和らげるし、退職金の額を減らすことができるからだ。

この前例を見ない就職斡旋プログラムがどれ程効果をあげているかは報じられていない。ただ私の仮説を当てはめると「米国(および英国)の銀行・証券業界では、販売するプロダクツに手詰まりなので、人減らしが喫緊の課題であり、企業トップまで首にする従業員のアウトプレースメントに汗をかいている」。そしてこれは「今後銀行・証券業界が伸びなくなること」を示唆している・・・ということになる。

欧米の金融機関というと、先進的なプロダクツの世界のように見えた時代があり、ディールの世界で利益を上げた人間が企業の階段を駆け上るのか・・・と思ったことがあった。しかしこれは幻想かもしれない。今しばらくは「人減らし」に腕を振るう人事マンが羽振りを利かす世界なのだろうか?

それにしてもライバル企業にまで、人材を斡旋するところは何でもありの米国でもさすがに先例がないらしい。それだけ証券業界が苦しいということだろうか?

日本では勧奨退職時に「競争先への再就職を何年か禁じる」という念書を取っている会社があった。ライバル企業に人材を斡旋するのもやり過ぎだろうが、競合先への転職を禁じるのもやり過ぎのような気がする。

いずれにしろこれらの施策を講じる人事マンは企業に残り組織の階段を登る・・・これが「縮む業界」としての金融業界の人事現象なのだろう。

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