金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

携帯電話業界の行き止まり

2009年02月05日 | 社会・経済

携帯電話というものについては、「機能」にも「市場」にもほとんど興味がなかった。ワイフからも「あなたはパソコンやカメラは好きなのにどうして携帯には余り関心がないの?」と不思議がられていた。携帯電話に余り関心がないのは、幾つか理由がある。一つは重要な用事もないのに、友達に電話したりメールをすることは成人男子のすることではないという信念。出張先から部下に携帯で報告を求めたり、指示をするのも嫌だった。大袈裟にいうと「将、外にあっては君命も聞かざるところあり」(孫子)というところだ。現場の責任者はその場その場で最善の判断をする訓練を積まないと成長しない。また自宅で頻繁に携帯でメールのやり取りなどするのも、何となく怪しそうで好きではない。

大層大袈裟なことをいったが、実のところ携帯メールの文字が小さいから老眼の進んだ身には馴染み難くなっているだけかもしれない。

しかし今回携帯電話を買い換えたことから、少し携帯電話というものに関心が出てきた。海外のニュースでもツイツイ携帯(Cellphone)関係のニュースを見てみようという気になった。

ニューヨーク・タイムズに「携帯業界は成長を続けることができるか?」という記事が出ていた。記事によると不況の嵐は携帯業界まで押し寄せている。しかしアナリストや投資家達は「これは景気循環による一時的な減収減益ではなく、構造的な変化が起きているのではないか?」という懸念を抱いている。つまり地球上60億人の半分以上が携帯電話を所有しており、もう飽和点に達したのではないか?ということだ。

NTによると先進国で携帯電話の販売台数は減少傾向だ。西ヨーロッパの販売台数は07年が191百万台、08年は171百万台、そして今年の予想は165百万台だ。米国では07年に176百万台で、08年は少し伸びて184百万台。今年は前年並みの予想だ。

日本については電子情報技術産業協会が統計を発表している。それによると08年4月から11月の携帯電話の販売台数は23,923千台で前年同期の76.1%だ。ただしワンセグ対応製品については販売台数は前年同期比158.4%伸びて17,851千台売れている。つまり高価格化が進んでいる。

日本の数字を見て思うことは「日本は世界の携帯市場の最先端を行っている。従って日本の携帯産業が最も早く行き詰る」ということだ。

どういうことかというと、販売台数が頭打ちになっている欧米諸国で今後伸びが期待できるのは、スマートフォンというハイブリッドな携帯端末だ。要は音声電話にPDAと呼ばれる携帯情報端末が着いていて、データの送受信やスケジュール管理ができる機種だ。製品名ではiPhoneやBlackBerryである。欧米でスマートフォンの普及率は10%位なので、普及機種からのアップグレードが期待できるという訳だ。スマートフォンの価格帯は日本円に換算して4万円弱から6万円程度だ。一般携帯電話の価格が1万円相当程度なのでかなり高い。

ところで日本ではスマートフォンの普及が遅れていると一般に言われている。しかし最近のワンセグ付の携帯電話の価格を見ると、スマートフォン並みに高い。またPDAなどプログラム可能なアプリケーションは搭載していないが、カメラ・テレビ・Iモードなどの機能を見ると、日本で売れている携帯電話の4分の3以上は日本型スマートフォンである・・・という見方も出来そうだ。

ということは来るところまで来てしまった日本の携帯電話市場は行き止まりに近づいているのではないだろうか?

それにしてもこのような数字を見ると日本人というのは「メカ好き」というか高級品指向が高いのだなぁとつくづく思う。これは携帯電話に限ったことではない。カメラの世界も同じだ。プロ使用のデジタル一眼レフをぶら下げて近所の草花を撮っているご年配の方々を見ると、日本人はメカ好きでそしてお金持ちなんだと思ってしまう。

そして使うかどうか分からない機能までてんこ盛りになった機械を買う我々はメーカーの随分美味しいお客さんだなあと苦笑を禁じえないのである。だがそのお客さんも刈り取りつつある・・・・というのが日本の携帯市場だろう。

コメント (1)
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