先週末古い携帯電話をなくした。警察に届けたら紛失場所を聞くが、どこでなくしたかは分からない。分かっていればそこに取りに行く。恐らくスポーツ・ジムの行き帰りに、バッグのポケットから滑り落ちたのだろう。古い携帯は「ムーバ」で数年の内にサービスが中止になり「FOMA(フォーマ)」に買い換える時期に来ていたから惜しくはない。もっとも古い携帯に入っているアドレス帳が使えないことはこたえるが。
携帯電話がないと不便なので、失くした翌日にドコモに行ったところ受付まで45分待ち(不景気でも携帯の需要は大きいのだね)。その間に新しい携帯機種を物色するが面倒くさくなり、金額で判断して少し安そうに思えたNECの706ieに決めた。後でセールスレディに聞くと半年前位に発売になった機種ということだった。
何故こんな話を書いているかというと「情報投資のコスト・効果の分析は下は携帯の購入から上は国家の情報投資効果まで難しい」ということを言いたいからだ。
話を「国家」に持っていくと、米国では今景気対策予算審議が上院で行われるところだ。その中に「数十億ドルかけてブロードバンドを田舎にまで普及させる」という案件がある。これについてニューヨーク・タイムズは「情報投資は賢明な景気刺激策か税金の無駄遣いか?」という記事で賛否両論を紹介している。
その議論の詳細はさておき、専門家が「情報投資の最初のルールは、エンドユーザーが何を欲しているか、どのような状態でその技術を使うかを理解するために時間をかけることである」「もしこの初期調査をしないと、人々が必要としないものや使うことが出来ないものに予算を無駄使いすることになる」と警告を鳴らしていることを紹介しよう。
さて私の携帯選びだが、この「必要とすること」と「ユーザーの技術水準」をちゃんと見極めたかというとハナハダ杜撰であった。まず必要とすることだが、私は基本的に「電話」と「メール」しか必要としないのである。写真を撮る時はデジタル一眼レフを使うし、テレビ(または録画)は家で見る。音楽を四六時中携帯で聴くほどの音楽マニアでもない。とすると「らくらくホン」で十分なのだが、やはり見栄を張ってしまったのだろうか?
それとドコモの値引きの魔術にかかったようだ。定価4.5万円位の機種が「ハイ、乗り換え割引で1万5千円引きです」「クーポンが4千円分貯まっています」などと言われて2万円程度になったので、ついつい無駄な投資をしてしまったのかもしれない。
それにしても新しい携帯電話のマニュアルは530ページもある。これが「誰にでも使い易い」携帯のマニュアルなの?と言いたくなる。今週末にはこの前買ったオリンパスの新鋭カメラE-30をマニュアル片手にいじくっているが、このマニュアルは携帯の4分の1程度のボリュームだ。マニア向けのカメラ・マニュアルの数倍のボリュームがある携帯電話が「普及機」というのも不思議な感じがする。(実際のところマニュアルを殆ど読まなくても日常の使用に不便はない。ということは「使わない機能」のために高いお金を払っているということか?)
色々愚痴を言ったが、個人の携帯電話程度の投資は無駄になっても知れている。またワンセグなどは頻繁に使うようになるかもしれない。「機能がニーズを掘り起こす」ということもありそうだ。しかし国家予算の無駄遣いは困る。
いずれにしても投資(IT以外でも)段階における「需要調査」と「使用環境(技術レベルやインフラなど)の点検」が重要だと再認識した次第である。