最近ニューヨーク・タイムズの「人気記事欄」Most popularを見ていて感じることは、経済や投資の話題が減って、健康や料理の作り方という話題が増えていることだ。料理に関しては健康食や省エネクッキングなどが話題になっている。
経済に関して明るい話題はないし、株式投資を行う気分にもならないので、もっと身近な話題に関心を向けていることのあらわれだろうと私は思っている。外食をやめて家で食事をするから、レシピに関心が行くという訳だ。これを私は「生活の基礎代謝を低下」と呼んでいる。新聞を見ていると多くのアメリカ人が生活の基礎代謝を下げ始めていることがよく見えてくる。
別の観点から見ると、経済記事の人気が下がっているということは、人々が先行きの不透明さのあまり、将来について思考停止をしていることのあらわれかもしれない。
考えても答がでないこと、例えば「死後の世界はどうなっているか?」などということを考えることを仏教では「妄想」というそうだ。仏教の教えの一つはこの「妄想」を止め、己の足元を見なさいということだ。これを禅の世界では莫妄想(まくもうぞう)という。禅僧が基礎代謝の低い生活をしているのは、妄想を起こさないためなのかもしれない。これは私の推測だが。
何時アメリカの金融システムは安定するのだろうか?仮に安定するとしてどれ位国民の税金を使うのだろう?住宅の値段はどこまで下落するのだろう?などなど一般のアメリカ人は考えても答の見つからない多くの問題に直面している。
考えても分からないから考えるのを一時停止しよう・・・・ということだろうか?これを思考停止と呼ぶべきか、莫妄想と呼ぶべきかは分からない。
ただ投資活動には「ばら色の将来という妄想の産物」という側面があると達観すれば、妄想のない世界というのは、投資活動がない世界である。投資の世界が活気を取り戻すには、人々が少し生活の基礎代謝を高めるとともに、多少の妄想を抱く必要があるようだ。