金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「失われた20年はウソ」だった?

2013年09月02日 | 社会・経済

世の中の常識や定説というものは、ある日突然覆ることがある。昨夜TBSの30分番組「夢の扉+」は疲労に関する話だったが、従来疲労の原因と言われてきた乳酸は実は犯人ではなかったという大阪大学の渡辺先生の研究が紹介されていた。私も世間の多くの人と同様、「乳酸が疲労の原因」と思っていたので、びっくりした。

疲労の話は関心の高いテーマなので、もう少し勉強した上でブログに書きたいと思うが、今日のメインテーマは経済の世界でも常識や定説と言われてきたことは、ある日突然変わる可能性がある、という話だ。

先月の中頃Forbes誌にThe Story of Japan's "Lost Decades'" was just One big Hoaxというタイトルの記事がでていた。「日本の失われた20年というのはただの一つの大きな騙し」ということだ。

寄稿者Fingleton氏はピーターソン国際経済研究所のCline上級研究員の説などを紹介しながら、日本の平均以下の経済実績の原因は、経済そのものではなく人口減少によって起きた現象であり、それを失われた20年と呼んだのは大きな間違いだ、という。

記事は又「日本の嘆かわしいデフレというのは問題ではない」とも述べる。アメリカ人は日本の緩やかなデフレを米国の1930年台の破壊的なデフレになぞらえたがそれは大きな間違いで、米国の歴史で言えば1880年から1900年にかけての「良いデフレ」に比肩されるべきものだ、というのがCline氏の主張である。

思い出したのは藻谷浩介氏の「デフレの正体」という少し前によく読まれた本だ。藻谷氏の主張もデフレの正体は人口減少とするものだった。

Forbesの記事は「失われた20年といわれる1991年から2012年の間に、アメリカの労働人口は23%増えたけれど、日本の労働人口はわずかに0.6%増えただけ。それでもそこそこの経済成長を維持しているのだから、日本の一人あたりの労働生産性の伸びは素晴らしい」と述べていた。

もし「失われた20年説は間違いで、デフレは言われたほど悪いものでなかった」という説が正しいとなると、将来のある日、今行われているインフレ率を2%にするという政策は間違いだった、と批判される日があるかもしれない。

乳酸が疲労の原因ではなかったと言われる日が来たように。

実際日常生活の色々なところで物価上昇は起きている。たとえばガソリン価格や電気料金の上昇だ。円安や世界的な需給ひっ迫感による原油価格の上昇が原因のインフレがジワジワと進行中だ。このインフレがインフレに連動して所得が上昇しない消費者層に打撃を与えるのは間違いない。失われた20年は悪くなかった、という説は日本の一般市民の中でも支持される可能性がある。

コメント (3)
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