私にはもはや縁がなくなった話だが、金融関係のウェッブサイトを見ていると求人広告を見かけることがある。気になるのはいつ頃からは記憶していないが、求人のオファー金額が相当下がっていることだった。外資系金融機関が元気だったことは、年収2千万円~などとオファーが目についたが昨今では「800万円からの転職チャンス」などという広告が目につく。
だがこれは日本だけの話ではない。
米国では昨日(9月6日)雇用統計が発表された。8月の非農業部門雇用者数は前月より若干増えて169千人、失業率は7.3%だった。雇用者数の事前予想は18万人だったから、若干低い上、前月の雇用者増が16.2万人から10.4万人に引き下げられたことから、マスコミは米国の労働市場がかかえる問題に改めて注目した。
WSJは「雇用市場はセカンドギャ」で「雇用が増えているのはレストランや小売業など低賃金セクター」で「人口増加を考慮すると最近の雇用ペースはリセッション前のレベルまで回復していない」という。
また「失業率は低下したが、それは人々が仕事を見つけたからではなく、仕事を探すことをギブアップしたからだ」「人口比で見ると、働いている人+職を探している人の割合は過去35年間で最低レベル」という。
労働参加率が低下しているのはある程度は長期的なトレンド(高齢化や大学進学率の増加など)である。このようなトレンドは今世紀初めから起きていたが、昨今の労働参加率の低下の大きな要因は経済の弱さである。8月で40ヶ月連続で労働市場からの退出人口が参入人口を上回った。
労働市場から退出した人がまた戻ってくることはあるのだろうか?WSJはエコノミストたちは多くの労働市場からドロップアウトした人たちは永久に戻ってこないのではないか?という懸念を高めている。米国で半年以上離職している人の数は4百万人以上で彼らが職を見つける割合は過去2年間ほとんど改善していないという。
8月の雇用統計のパッとしない数字を受けて連銀は今月17-18日のFOMCで金融政策の舵取りを微調整するのではないか?という観測もあるが、大きな変化はないだろうというのが市場の見方だ。
CNBCによると、金曜日の雇用統計発表後に市場のプロに調査をかけたところ、9月に債券購入プログラムの縮小が始まると予想した人は前月後半の調査より5ポイント減少して43%だった。10月縮小が始まると予想する人と合わせると73%の人がまもなく債券購入プログラムの削減が始まると予想している訳だ。
CNBCの調査によると、国債市場の参加者の81%(前月調査時は66%)がプログラム縮小の影響を織り込み済みと判断し、株式市場の参加者の73%(前回58%)が織り込み済みと判断している。
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さて雇用の問題に話を戻すと、高い給料を払う求人が減っている理由について私は景気の不透明感や成長力の弱さだけで説明できない何かがあると私は感じている。
その何か?とは例えば「セールスマンの感による営業」から「データベースによるコンピュータの営業」である。アマゾンで何回か本を買うと、(恐らく)アマゾンのコンピュータが自動的に「あの本を買った人はこんな本も買っています」的なメールを送ってくる。そして何回かに一回は「こんな本」を買うのである。
人は色々な分野でコンピュータと競争せざるを得ない時代を生きているのである。