金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「サービス付き高齢者向け住宅」、直感狭そう。

2013年09月17日 | うんちく・小ネタ

最近「おしだそう」という高齢者詐欺防止キャンペーン広告を見ることが増えた。松平健が火事装束で出ている政府広報だ。「おしだそう」の「お」は「おいしい話にのらない」「し」は「信じこまない」「だ」は「大丈夫だと思わない」「そう」は「相談しよう」である。「おしだそう」は高齢者に限った話ではない。世の中には「美味しい話はない」のである。仮に売り手のミスプライスで瞬間的に「美味しい話」が生まれても、買い手が殺到して値段が上がってしまうので基本的にはこの世においしい話はないのである。

さて今日の本題は「サービス付き高齢者向け住宅」についてである。先週ブログで「近々日本相続学会で吉田弁護士の高齢者には賃貸住宅が向く、という主旨の話を聴く」という話を書いた。これについてある読者の方から「60代半ばを過ぎると貸し手が減るのではないか?」というコメントを頂いた。確かに一般的には賃貸物件のオーナーは高齢者を敬遠する可能性があるかもしれないが、そこは良くしたもので高齢者向け賃貸住宅が増えつつある。

以下の話は上記吉田弁護士から「最近の不動産の話」(金融財政事情研究会発行 吉田修平法律事務所著)を贈呈されたので、そこからの引用が多い。

「サービス付き高齢者向け住宅」(以下「サ高住」は、法律に基づく「バリアフリー化された高齢者向けの民間賃貸住宅で都道府県知事の認可を受けて運営される」ものだ。もとになっている法律は「高齢者の居住の安定確保に関する法律」で、今日現在の戸数は12万4,888戸(3,849棟)である。http://www.satsuki-jutaku.jp/search/index.php

吉田弁護士の著書では平成25年2月時点で「サ高住」は10万925戸(3,143棟)と紹介されているから、半年あまりで2.3万戸ほどの戸数が供給されたわけだ。

「サ高住」の実施により、高齢者に分かり難かったこれまでの「高円賃」(高齢者円滑入居賃貸住宅)、「高専賃」(高齢者専用賃貸住宅)、「高優賃」(「高齢者向け優良賃貸住宅)」は、廃止され、「サ高住」に一本化された。「高齢者に分かり難かった」とよく説明されるが、高齢者でなくても分かり難い制度だった(私もあまり関心がなかったのでよく分からない)。

「サ高住」の入居資格は「60歳以上」「配偶者、60歳以上の親族」「要介護、要支援認定を受けている人」などだ。基本的には自立しているあるいは軽度の介護を要する高齢者を対象とした賃貸住宅であり、「安否確認サービス」と「生活相談サービス」を受けることができる。

また「サ高住」の住人・オーナーの間の契約は「賃貸契約」なので、「利用権方式」を採用する有料老人ホームより住人の立場が強い。また家賃は比較的低額で「入居一時金」といったものは否定されている。

吉田弁護士は「『サ高住』は、まず高齢者にとって非常に優しい住宅であるといえます。・・・・『サ高住』はわが国の超高齢社会を支える住宅として、きわめて重要な一を占めていくことは間違いないでしょう。」とベタ褒めである。

と、以上のように見てくると良いことずくめに見える「サ高住」だが、問題はないのだろうか?

私が直感する最大の問題は「部屋の狭さ」である。「サ高住」の各居住部分の床面積は原則25㎡以上と法律で定められている(居間、食堂、台所を共同利用する場合は18㎡以上でもよい)。

インターネットで自宅近くの物件を調べてみるとほとんどが25㎡以下だった。25㎡では一人暮らしはできても家族と一緒に暮らすには狭いと私は感じる。

家賃については吉田弁護士の著書によると「月額5万円から10万円ぐらいというのが傾向のようです」とあるが、東京に限るともう少し高く、20万円以上という物件もある。

まだ私の勉強不足でよく分からないのが、公共住宅供給主体が行っているシルバー住宅との住み分けだ。ざっと見るとシルバー住宅の方が広い。そして単位面積当たりの賃料は安い。

単純に考えると「自立していれば」シルバー住宅の方が良いと思えるのだが、市場が小さいのだろうか?

冒頭の話に戻ると高齢者向け賃貸住宅でも「おいしい話」はないと考えるべきである。つまり物件の広さやクオリティと賃料は連動している。たまたま割安な物件があったとしても非常に競争倍率が高くて入居は困難なことが多いだろう。

というような基礎知識を踏まえて今週は吉田弁護士のセミナーに臨もうと考えている。

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サマーズ氏、議長選辞退でS&P戻り高値に近づく

2013年09月17日 | 金融

先週日曜日にサマーズ氏はオバマ大統領に電話をかけて、自分を次の連銀議長選の候補から外すように要請した。

このニュースを受けて昨日月曜日(16日)の米国株式市場は概ね上昇、S&P500は一時は過去の最高値1709ポイントに迫る1705ポイント近くまで上昇した。引け値は9.61ポイント(0.57%)上昇の1697.6ポイントだった。

サマーズ氏は少し前まで次の連銀議長の本命と見られていた。サマーズ氏が連銀議長になると、債券購入プログラムの縮小が早まるとの見方が強かったが、サマーズ氏の議長選辞退で、本命はQE3の推進者ジャネット・イエメン女史が本命になったと市場は判断した。

イエメン女史はサマーズ氏より「ハト派」的政策を持続すると考えられるから、株価は上昇し、国債金利は低下。少し前に一時3%をつけた10年国債は2.87%まで低下した。

オバマ大統領はサマーズ氏を次の連銀議長に据えたいと考えていたが、上院銀行委員会の一部の民主党議員から反対が高まっていたことなど反対勢力が強く最終的には諦めざるを得なかった。

その背景にはこのところシリア問題などで大統領が苦戦していることがある。「風が吹けば桶屋が儲かる」の論法で言えば、シリアの毒ガスで投資家が儲かると言えそうだ。もっとも長続きするかどうかは分からないが。

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