金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

グループ登山における「予測と価値判断」の難しさ

2014年10月14日 | 

この3連休(10月11日ー13日)で、頸城山塊の火打山・妙高山登山に出かけた。基本計画は登山1日目に笹ヶ峰から火打山に登り、黒沢池ヒュッテに泊まり、2日目に妙高山を越えて赤倉温泉に登るというものだった(元気な人が一人1日目に妙高山と火打山を登って黒沢池ヒュッテに泊まった)。

1日目は快晴で無事火打山登山を終了(一部体調の悪い人は火打山登頂を割愛した)。

2日目は台風が接近していたが、朝5時20分頃の黒沢池ヒュッテは曇り。妙高登山を止めて笹ヶ峰に直行するグループと分かれて、妙高登山グループは大倉乗越に向かったが、20分ほど登った大倉乗越の手前で雨が降り出した。少数の「このまま行きましょう」という声もあったが、妙高山の岩場のスリップリスクや台風接近に伴う交通マヒリスクを考慮して、笹ヶ峰に引き返すことを決定し、先発隊は7時半頃笹ヶ峰に到着した。

だがこの時実はちょっとしたハプニングが後続隊に起きていた。それは後続隊の中核メンバーの一人が濡れた岩場でスリップして軽い肉離れを起こすというものだった。肉離れ自体はたいしたものではなく、後続隊も約1時間後には下山してきたので、大きな問題には至らなかった。

しかしこのちょっとしたハプニングは、私に改めてグループ登山における「予測と価値判断の難しさ」という問題を提起したように思われる。

予測つまりこの場合は当日の気象判断だが、黒沢池ヒュッテ界隈は携帯電話の電波が届かない上、小屋にはテレビがないため、気象情報は前夜の聞き取り難いラジオ放送だけが頼りだった。また当日の雲の様子などから見て、昼頃までには雨が降り出すと誰もが予想したが、「数時間は雨は大丈夫だろう」と判断を下した。だから妙高山登山に向かったのである。一つの問題は「数時間の間雨は降らないだろう」という判断は、「数時間の間雨は降って欲しくない」という希望的観測により歪められていた可能性がる、ということだ。もし何らかの理由で「下山を急ぐ」というモチベーションが高かった場合、「数時間のうちに雨が降るだろう」という予測を立てていた可能性は高い。人間の判断力は決して客観的ではなく、潜在的な希望に左右されている可能性が高いということだろう。

次に仮にメンバーの気象判断の足並みが揃ったとしても「その環境下で登山を続けるかどうか」は各自の「登山に対する考え方や価値判断」で異なるという問題がある。「せっかく来たのだから、少々の雨でも登ろう」という意見と「雨なら面白くないから次の機会にしよう」という意見がでるのは、しばしば起きることだ。「雷を伴う雨」とか「視界が極端に悪い吹雪」が予想されるような場合は当然誰もが「やめ」と判断するのだが、そこそこの雨の場合は「登山に対する価値判断」の問題が入るので、リーダーとしては、意見をまとめるのに慎重な判断が求められる。もっとも「行きたい人は行き、帰りたい人は帰る」というグループ分けも可能だが、あまり少人数になると事故対応能力が低下するので、安易なグループ分けは危険だ。

もっともこのような問題は、リーダーの統制力が強い山岳会の場合は余り起きないだろう。それは「メンバーの価値判断基準が一致していて」「リーダーの統率に従う」というルールが徹底しているからだ。

ところが元の職場の山好きを中心とした場合の登山グループの場合は、「価値判断基準は必ずしも一致しておらず」「リーダーの統率に従う」という規律も山岳会ほど強くはない。またリーダーもメンバーの体力的・技術的限界を知悉している訳ではないという問題もある。

無論下山時のメンバーの一人の肉離れと妙高山を登り始めたという判断の間に強い因果関係があるとは思わない。肉離れというハプニングの直接的な原因は靴底が滑り易かったことや傘をさして岩がごつごつした道を歩いていたことにあると思われる。しかし仮に「妙高山に登ることを止めて初めから下山していたらこのハプニングは起きなかったかもしれない」という仮説は成り立つかもしれない。

もとより登山には大なり小なりリスクはつきものである。そのリスクを引き受けるかどうかは達成することによるご褒美の大きさで判断するしかない。仮にご褒美を頂上からの素晴らしい景色とするならば、雨の日の登山はリスクとご褒美が見合わない可能性が高い。ただし人によってはご褒美をその山に登った記録、と考えている人もいるので、グループ登山による意思決定には時々難しいことがあると私は改めて思っている。

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「サル学」から何を学ぶことができるか?

2014年10月14日 | うんちく・小ネタ

私が理事を務めている一般社団法人 日本相続学会の研究大会(11月15日)でのメインスピーカーは京大霊長類研究所の松沢哲郎教授で演題は「想像する力」、サブタイトルは「チンパンジーが教えてくれた人間の心」だ。チンパンジーが何を教えてくれたのか?はお話を聞かないと分らないが、生物学者の研究成果を社会科学にたずさわるものが、利用させて頂く時代が近づいているとすれば、この企画も時宜を得た企画ということができるだろう。

文芸春秋の今月号(11月号)に、松沢教授と同じサル学者の山極京大新総長と生物学者・福岡伸一さんの対談がでていた。タイトルは「人間はどこから来てどこに向かうのか?」。サブタイトルは「人種差別、セックス、高齢化・・・ゴリラを見れば人間社会の未来が見えてくる」だ。

その中で山極さんは「我々自身の社会を動かしているのは、百パーセント正しい解答ではなく、『どうもそうらしい』という言説(解釈論)です。その意味で、たぶん我々の学問というのはかなり現代社会に密着しているし、社会科学、人文学、哲学というところにオーバーラップしている。だからこそ、生物学者が社会に対してものを言っていかなくてはならない時代になっているような気がしています。」と述べている。

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山極さんと福岡さんの対談をベースに「老人の役割」をいうことを考えてみた。

山極さんは「人間以外の霊長類は死ぬまで子どもを産み続ける。」「人類の女性は閉経後も長生きする。その理由は人間は直立歩行により産道を大きくすることができなくなり、難産になった。だから体力のあるうちに難産はやめて、残りの人生は娘や孫の世代のお産の手助けに回って、種の生存を高めたというのが女性が閉経後も長生きするきっかけになった」という。

また男性も含めて人類にだけ「老後」がある理由を「自分一人では生きられない老人を、介護してまで活かそうとする努力がなされるためには、その老人たちが普通の人とは違う能力を持っていて、重要なんだという認識が社会に生まれなくてはいけません。今の若い世代が経験していない過去の出来事を語って聞かせ、それが社会に反映されるようなことがなければ、こうした介護は生まれなかったと思います」と述べている。

更に山極さんは「老齢者の時間感覚は右肩下がり、あるいは平行線で、これは子供の時間感覚とぴったり合う。老年期の人たちが教育者として大きな力を発揮し始めたのは、彼らが持っている時間が非常にゆったりしたものだったからです。」と付け加えている。

恐らく人類の男女が若者の援助(食糧を調達するなど)や介護(移動を助けるなど)を受けて、長生きするようになった理由を「種の生存」理論から説明するとこのような解釈論がもっとも受け入れやすいものだろう。

現代の先進国の事情は、種の生存理論だけで老後や介護の意味や役割を説明するには複雑になり過ぎているのも事実だ。しかし複雑な社会に補助線を引くことで、何かが見える可能性があるとすれば、「サル学」の研究成果も有力なヒントなのかもしれない。

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Monkeynew

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しばらく続きそうなsell-offムード

2014年10月14日 | 金融

今日(10月14日)の東京は台風一過で青空が広がっている。しかしマーケットの方は先週あたりから拡大してきた暗雲がしばらく続きそうだ。昨日米国では株価は再び大幅下落。ダウは223.03ポイント(1.35%)下落した。

特に悪いニュースや経済指標の発表があった訳ではないが、エボラ熱懸念などが売り材料になったようだ。投資家の間では、世界景気がスローダウンする中で、米国が持ちこたえられるかどうかを、今後発表される企業決算の結果を見て判断したいという様子見が多いことも株価下落を加速した模様。

週末のG20で各国の中央銀行の景気悪化対応策の手詰まり感が鮮明になってきたことも、投資家のセンチメントを湿らせている。

日本が消費税を再引き上げを決定するかどうかも市場の大きな関心事になってきた。消費税の引き上げは短期的には、さらに景気を減速させる可能性が大きいが、消費税を引き上げないと日本の財政規律に対する不安感が高まるからだ。

それは消費者=国民が痛みを伴う根本的治療方法を受け入れるかどうかの試金石である。リーマンショック以降国債の大量発行でリセッションから脱出してきた先進諸国にとって、その債務の返済が進む前に新たなリセッションのリスクが高まりつつある。

日本の消費者が増税を受け入れるかどうかは国の借金がかさんでいる他の国にとっても試金石である。投資家にとって考えなければならい問題は多い。

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