金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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お金持ちの消費ダウン、先行きに注意

2014年10月15日 | 社会・経済

CNBCによると、米国以外の富裕層の消費が減速している。記事によると、コンサルタント会社ベイン・アンド・カンパニーの新しい調査は、今年の高級品の売上高の成長率は2009年以降で一番低くなりそうだと述べている。

2009年はリーマンショック後、消費のリバウンドが始まった年だ。リーマンショック後の世界の消費を牽引してきたのは、富裕層だった。エコノミスト達の推計では、景気回復過程で、上位20%の消費者が、全消費の50%以上を占めていた。

だがウクライナ危機・香港の民主化要望デモ等政治・軍事的な不安が高まっている上、欧州や日本の景気減速が鮮明になり、株式市場にも陰りが見えてきた。

高級品市場の陰りは、ハイエンドの小売業のレポートからも読み取れる。たとえば今年の上半期に純収入が21%減少したプラダは、引き続き市場が弱いと予想している。またバーバリーも今年後半は減収と若干の利益率の低下を予測している。

経済成長とともに、高級品の売上が伸びてきた中国でも、今年は初めて売上高成長率はマイナスになりそうだ。CNBCはその理由を、汚職取り締まりの強化により、時計・ワインからスーパーカーにいたる高級品市場の売上が鈍化すると述べていた。

もっとも明るいスポットもある。高級車市場は今年10%売上高が伸びると予想されているし、ハイエンドのツアーや食事が伸びることで、ホテルの売上も9%ほど伸びると予想されている。国別ではアメリカが持ちこたえている。アメリカの高級品市場では、消費力のある若い世代が「ぜいたく品に対する興味の再発見」という形で需要を押し上げているとベインのレポートは報じている。

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金融危機後の消費を牽引してきた富裕層の財布の紐が固くなってきたということは、景気の先行きに黄信号をともしているようだ。ベインのレポートによると、今年の世界の高級品市場の売上高成長率は2%に留まり、市場規模は2,820億ドル相当になるという。また堅調な米国の高級品市場の成長率は5%で、市場規模は650億ドルに達するという。

これから先はレポートを離れてまったくの私見だが、消費を拡大させるには「高級品市場の拡大」を図るしかない。なぜならことの良し悪しは別として、これからも所得に二極化が持続し、裁量的消費力は富裕層に集中するからだ。その最大のドライバーはIT技術だ。IT技術は技術の中核にいて「仕組みを作り出す」人に富を集中させ、技術の外側にいて「仕組みに使われる」人に低コスト労働を強いる。だから所得の二極化が進むのである。

高級品市場といっても、恐らく「所有する」高級品の市場は、車を除くとあまり拡大しないかもしれない。理由は人々がモノを持つことに疲れてきた面があると私は考えている。高齢化社会で持ち物を増やすことはスマートな生き方ではない。それと高級品好きの中国市場の縮小だ。ベインは今年中国の高級品市場は2%ダウンすると予測している。

一方「費消する」高級品市場つまりツーリズムなどはまだまだ拡大する余地があるだろうと私は考えている。フェイクでないリアルな感動を生み出す特別企画的なツアーなど恐らく世界的に大きな需要はあるはずだ。IT技術の進歩でバーチャルな、ある意味ではフェイクな世界は簡単に手に入るようになった。しかし人はフェイクな体験に疲れ、リアルな世界を求めている。

もし政府が経済成長のため消費を伸ばすことが肝心だと考えるなら、リアルな世界を求める消費者のニーズをencourageするような施策を取るべきだろう。

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