金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

相続対策でも「羅針盤は地図に優先する」

2017年03月23日 | ライフプランニングファイル

桜の開花情報がでましたが、まだ寒い日が続きますね。それでも間もなく4月です。4月は入学・進学・入社のシーズンです。

4月早々に私はある顧問先で新入社員の方向けに少し話をする予定になっています。テーマは「情報の蓄積と発信」ということにする予定です。

聴き手の新入社員の方はDigital nativeと呼ばれる世代の人たちですから、私よりインターネットを利用した情報収集についてははるかに慣れていて巧みだと思います。

しかし氾濫する情報の海を上手く航海しているかどうかは分かりません。

そこでうけるかどうかは分かりませんが、「羅針盤は地図に優先する」という話を少ししてみたいと考えています。これは米国の学校などよく使われるCompass over mapsを訳した言葉です。地図を「情報」羅針盤を「見識・行動指針」などと置き換え考えると「行動指針は情報に優先する」と言えると思います。指針のない情報収集は無駄であり、時に航海のノイズを増やすだけかもしれません。

前置きが長くなりましたが、私は相続対策でも「情報よりも方針が大切である」と考えています。情報の代表的なものは節税対策などの情報です。節税対策の一つとして「法定相続人の数を増やすため養子縁組をする」という方法があります。1988年の税法改正で税法上相続人にできる養子の数は実子がいれば一人、いない場合は二人に制限されています。また国税庁は実態を考慮して有効な養子縁組でも税控除を認めない場合もあるとしています。

一方最高裁は先月上告審で「節税を目的とした養子縁組でもただちに無効とはいえない」という判決を下しました。ある新聞はこの判決を見て今後節税を目的とした養子縁組が増えるかもしれないとコメントを出していました。

果たして今後養子縁組が増えるかどうかは分かりませんが、もし節税を目的とした養子縁組が増え、相続分が減ることで不満を持つ実子等との間でもめ事が増えるとすれば、甚だ本末転倒な気がします。

巷間「相続税対策を持って相続対策とする」業者や専門家と呼ばれる人が多く、それを受けて「相続税対策」に走る人が多いと聞きます。だが相続税対策が養子の数を増やしたり、分割・換金が難しい不動産を増やすような場合は深刻な遺産相続争いを招く可能性があります。

私はこの状態は「節税対策という情報に振り回されて、残された家族の健全な関係維持という指針を忘れた行動パターン」ではないか?と感じています。相続税対策はできるだけ多くの財産を相続人に残すという目的のために行うものですが、その結果相続人が相続税の支払いに苦労したり、深刻な相続争いに巻き込まれることになると目的と手段が完全に倒置していますね。

「羅針盤は地図に優先する」という言葉は、これから実社会にでていく若者に贈る言葉であるとともに、人生という長い航海を終えて、次世代にバトンを渡す年代の人にも必要な言葉かもしれません。

 

 

 

 

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