goo blog サービス終了のお知らせ 

金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

結局ドル円為替は経済次第・・

2017年07月04日 | 投資

昨日の朝、「都議選での自民党の大敗を受けて円高が進むのではないか?」という投機筋の観測から一時円が買われるという場面があったが、それはほんのひと時こと。昨日米国で発表されたサプライマネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数が2年10カ月ぶりの高水準となり、米国の長期金利が上昇してドル高・円安になった。

為替や株の世界では、当面都議選での自民党の敗北は今のところほとんど影響がでていない。うがった見方として、安倍政権が支持率回復のために、経済重視に舵を切るという見方もあるようだが、私は相当懐疑的に見ている。昨日日銀が発表した短観を見てもわかるように、現在の日本の景気は底堅い。景気の底堅さは、日銀の金融政策を別にすれば、日本政府の後押しではなく、米国その他諸外国の景気の良さに支えられている面が大きい。

結局のところドル円為替の水準を決めていくのは、日米金利差に対する予想であり、日本の金利が相当長い期間ゼロ近辺に据え置かれると考えれば、米国の金利がどう動くか?ということが決定要因になる訳だ。

もっとも昨日発表されたISM景況感指数は米国経済の強さを裏書きするものだったが、そのことが直ちに連銀の政策金利引き上げにつながる訳ではない。先月の数字を見れば米国のインフレ率も鈍化気味で、次の金利引き上げをjustifyするレベルには達していないだろう。

ところで米国の北隣のカナダの景気が好調で、カナダドルは6月下旬に急伸した。これはカナダの中央銀行が早い時期に金融緩和縮小に向かう姿勢を示したことによる。

過去20年の経済成長率で見ると、カナダの成長率は2.5%で、米国の2.3%をわずかながら凌駕している。このカナダの持続的な経済成長率の高さの一つの要因は女性の労働参加率の高さである。カナダ・米国とも1990年代中頃の女性の労働参加率は75%程度で拮抗していたが、その後カナダは積極的な子育て支援策などで女性の労働参加率を高めてきた。その結果昨年時点での同国の女性労働参加率は82.2%に高まっている。一方米国の女性労働参加率は74.3%に留まっている。

この事実に着目してWSJは「どうすれば米国はもっと女性の職場進出を図れるかカナダに聞いてみれば?」という記事を書いていたが、日本こそカナダに学ぶ必要があるだろう。

話が脇道に外れたが、為替の決定要因は、内外金利差であり、現在の内外金利差は中央銀行の金融緩和路線からの方向転換の速度にかかっている。

中央銀行の金融政策を動かすのは、雇用情勢とインフレ率である。雇用情勢の一つのベンチマークは失業率だが、私は本当に重要なのは、一般的な失業率ではなく、不完全雇用失業率だろうと考えている。つまり「今の仕事に不満だけれど嫌々働いている」という人を失業者にカウントした失業率が大事だと考える次第だ。

この考え方に立つと、日本の非正規雇用者のかなりの部分は不完全雇用と分類され、失業率に関する全く違った絵姿があらわれる可能性がある。

労働参加率を高めることと、社会保険への加入を含めた同一労働同一賃金制度の確立が持続的な経済成長を可能にする唯一の方法なのだが、このことが政治の場で最重要課題として議論されていないことに私はもどかしさを感じている。そして日本がこの問題に取り組まない限り、経済成長には限界があり、敷衍していえば、長期的な円安傾向にあると私は考えている。

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

OB飲み会も転換点・・・

2017年07月04日 | うんちく・小ネタ

昨日昔務めていた会社のOB連中の飲み会に行った。

私より5年ほど先輩の人が長年幹事を務めてきた飲み会で、年に3,4回神田界隈の中華料理店に集まって、健康問題など近況などを肴にひと時を過ごす会だ。

私は懐古趣味が好きではないので、あまりこの手のOB会には参加しないが、幹事の人と気が合うのか不思議とこの会には参加を続けている。

皆さん、年齢が年齢だけにフルタイムで働いている人はいないが、調停委員などで結構忙しくしている人とまったくの悠々自適組に分かれている。

統計データによると、65歳以上で働いている人は22.8%だから4,5人に1人は65歳以上でも働いている訳だ。この会のメンバーも概ね軌を一にしているようだ。因みにG7の中で65歳以上で働いている人の割合が一番高いのは日本で2番目が米国の19.3%。一番低いのはフランスで2.9%の人しか働いていない。フランスでは34人に1人しか65歳を過ぎても働いている人はいない計算になるから、このようなOB会でまだ働いているというと、希少種扱いされるかもしれない。

退職後暇を持て余すという人と結構充実した日を過ごしているという人がいる。同じような時間の過ごし方をしても心の持ち方で感じ方は随分違うのかもしれない。

吉村昭氏に「居間にて」という超短編小説がある。その冒頭はこんな書き出しで始まっている。「五年前に商事会社を定年退職後、関連会社の役員になり、それも半年前に退職した。会社を定年でやめると、なすこともなく日を過ごさねばならぬ生活がむなしく、深い寂寥感にとらわれるという。しかし、浦川(主人公)は、出社する必要もなく自由に時間を費やすことに浮き立つような開放感をおぼえていた」

野球を観るのが好きな主人公はウイスキーの水割りを飲みながら、くつろいでナイター観戦するひと時にくつろぎを覚える・・とつながっていく。

これは超短編小説なので、主人公が退職1年後や3年後にも寂寥感ではなく開放感を味わっているかどうかまでは書かれていない。

その辺りについて読者は自由に想像力を働かすことができる訳だ。

さてこのOB会だが、病気等で参加できない人が増えてきたので昨日で休会しようということになった。暇を持て余そうが充実した日を過ごそうが、歳を取るということは健康という重い課題を課すものであることは間違いない。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする