WSJにUnder Trump,a storong Economy but murky policy outlookという記事があった。「トランプ政権下、強い経済と不透明な経済政策」という意味だ。Murkyを辞書で確認すると「(闇が)濃い、濁っている、後ろめたい、恥ずべき」という後ろ向きの意味が並んでいるので、単に「不透明な」というより闇に包まれたというニュアンスが強そうだ。
記事によるとスタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授達は「経済政策不確実指数」という指数は開発した。この指数は経済政策に関する新聞記事の中のUncertain(不確実な)とUncertainty(不確実)という言葉を追跡して指数化したものである。
トランプ大統領就任後の13か月間の経済政策不確実指数は平均140.2でオバマ前大統領の同じ期間の平均126よりも高かった。
過去の大統領の経済政策不確実指数を見ると、レーガン104、父ブッシュ109、クリントン89、息子ブッシュ107、オバマ135、トランプ140となっている。
オバマ大統領時代はリーマンショック後の大不況期で自動車メーカーの救済、連銀の非伝統的な金融緩和政策が行われた時期で、議会は税制政策を巡り、絶えず民主党・共和党の瀬戸際政策が展開されていた。
本来経済状況が好調な時は経済政策は見通しが良いと思われるのだが、なぜ絶好調に近い経済状況の下で経済政策の不透明度が高まっているのか?
指数の開発者の一人ブルーム教授は「その原因の一部は貿易政策などでの大きな政策スタンスの変更があったことで、もう一つは無秩序な意思決定プロセスにある」と不確実性が高まっている原因を分析する。
同教授は「トランプ支持者たちは、経済政策の不確実性はトランプが選挙期間中に公約したことを実現している結果である主張するだろう」と述べるが、同時に「トランプ大統領の経済政策に関する懸念は、経済に『不必要なコスト』を課している」と述べている。
理論的には、経済や経済政策の不確実性が高まると、企業は投資や雇用を抑制するので、経済活動はスローダウンする。しかし足元の状況はトランプ政権の経済政策の不確実性が企業活動全般にブレーキをかけるような事態を引き起こしてはいない。
ただし投資の世界では、ブロードコムによる買収に対し政府が待ったをかけたクアルコムの株価が急落したり、最近大統領がツイッターで攻撃の矛先を向けたアマゾンの株価が急落するなど、想定外の事態が起きいている。
時価総額が大きいハイテク銘柄の急落は、市場平均株価を押し下げ、コレクションを引き起こすかもしれない。そうなってくると消費者のセンチメントに変化が現れ、経済活動に影響が及ぶ可能性がある。
経済政策の不透明度が高いということは軽視するべき問題ではないだろう。