今週火曜日に行われた米国の大統領選挙の結果は金曜日になってもまだはっきりしていない。WSJなど主要なメディアでは、民主党のバイデン氏が264名の選挙人を確保し、トランプ氏は214名の選挙人を確保していると報じている。
当選するには270名の選挙人の確保が必要なので、バイデン氏は後6名で当選だ。バイデン氏は結果が出ていない4州の内1州でも取ると当選する(一番選挙人が少ないネバダ州でも6名の選挙人がいるので)。一方トランプ氏は4州全部取らないといけない。また郵便投票の開票が進むにつれバイデン票が増えているが、まだtoo close to call(判定するには拮抗し過ぎていう)の状態だ。
大統領選・上下院選の直前から株式相場ではラリーが始まっていた。大方のマスコミはバイデン氏の8%以上のリードや、民主党が大統領・上院・下院を総取りするをメインシナリオを流していた。この時点では投資家は「民主党が政権を取るとコロナ対策の財政出動額が増えるので景気浮揚につながる」という理由から民主党の勝利を歓迎した。ところがフタを開けてみるとトランプが下馬評を越えて善戦する。また上院で共和党の善戦が見えてくると投資家は「民主党が全面的に勝利すると大企業や富裕層への増税が行われるので、企業業績が鈍化する。だから共和党が拮抗する力を持っている方が良い」などと都合の良い理屈をつけた。
結局昨日(11月6日)こそ株式市場は足踏みしたものの、週を通じては4月以降で最高のパフォーマンスの週となった。
昨日は米国で雇用統計が発表された。非農業者雇用者増は63.8万人で失業率は前月比1%低下して6.9%になった。失業率の事前予想は7.7%だったので、予想より雇用市場は堅調なことがはっきりしたので、買い材料だと思うが、ダウは66.78ドル(0.2%)と小幅下落した。
今週に入って昨日までに7%以上上昇していたので、一休みというところだろう。
株価は長期的には経済のファンダメンタルで動くといわれている。この視点に立つと、誰が大統領になろうと長期的にはそれ程株価に影響を与えないことになるが、短期的に選挙予想や結果が株価のブレを大きくしている。投資家が色々な思惑でポジションをロングにしたり、ショートにすることで、株価の振幅は大きくなる。マスコミには「投資家は常に株を買う理由を探している」というコメントが出ていたが、本当のところは投資家が株を売買することで手数料を得ることができる証券会社などが煽っているということもあるだろう。
なおこの1週間の3市場(ダウ・S&P500・ナスダック)のパフォーマンスを見るとハイテク銘柄が多いパフォーマンスが9%と一番高かった。これは新型コロナウイルス感染が拡大する中、誰が大統領になっても、景気が上向いてきても、全面的な経済活性化には相当時間がかかり、テレワークなどが持続すると投資家が判断していることを示している。自分に都合の良い理由を探して株を売買する投資家だが、この予想は大統領選の予想よりは確度が高そうである。