最近日本の経済や金融が英語の経済紙の記事になることは滅多にないが、今日のWSJに日銀が連休前に発表した「国債の指し値オペ」の話が取り上げられていた。
10年物国債の利回りは昨日0.23%に近づいたが、日銀は連休明けの14日(月曜日)に0.25%で無制限に同国債を買い入れると発表した。
これは14日までにそれ以上の利回りで国債を売ると馬鹿を見るという強いメッセージだ。債券は流通利回りが上昇すると価格は下落するので、週明けになれば0.25%の利回りに相当する値段で売れるものをそれ以下の値段で売ること、つまり流通利回りが上昇することに歯止めをかける強い手段を日銀は打った訳だ。
今米国はインフレ加速に頭を痛めている。昨日発表された1月の消費者物価指数は前年同月比7.5%の上昇だった。これに較べて日本の12月のインフレ率はわずかに0.8%だった。米国では昨日10年債の流通利回りが2%台に乗ってきた。債券利回りはインフレと連動するとともに経済成長率の鏡でもある。
急速なインフレは消費者を直撃する。特に年金受給者層が多い日本でもしアメリカ並みのインフレが起きるとパニックに陥る消費者が多そうだ。
アメリカでは今回のインフレで家計支出が276ドル(約3万円)増加するという試算がある。3万円も家計支出が増えると赤字に転落する年金受給者が増えるだろう。
だから日本は本当はアメリカよりもインフレに警戒心を高める必要があるのだ。しかし現実はラーメンやコーラなど一部の食料品で値上げの声は聞かれるものの多くの物価はまだ落ち着いている。
インフレ対策を強化しているのはアメリカだけではない。英国中央銀行も政策金利を引き上げた。先進国はパンデミックから脱しつつあり、金融政策をアクセルからブレーキに変えている。
今なおアクセルペダルに足を置いたままの日本の姿は欧米のマスコミには奇異に映ったのだろう。このまま行くとに米金利差からドル円為替は円安に振れ、円安は輸入物価を押し上げ、日本でもエネルギー価格や穀物価格の上昇が始まることは間違いない。過度の低金利政策は副作用が大きいだろう。