金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ウクライナ戦争にロシアの勝利はない。ただ窮鼠は猫を嚙むともいうが・・・

2022年05月09日 | ニュース
今日5月9日はロシアのウクライナ侵攻を見守っている人には重要な日だった。何故なら5月9日は旧ソ連が第二次世界大戦でロシアに勝利した記念日でプーチン大統領がウクライナ侵略について何らかの方針を示すと予想されていたからだ。たとえばロシアがウクライナの宣戦を布告し、ウクライナ戦争が始まるのではないか?という見方もあった。
 だが私がニュースを見ている限りプーチンから戦争の方向付けについて明確な発言はなかった。
 彼の心に分け入ってみよう。簡単にいうと宣戦布告等の方針を打ち出すのはリスクが高過ぎると彼は判断したのだ。もし一。旦戦争布告をすれば、振り上げた拳の降ろしどころが極めて難しくなるはずだ。プーチンはまだ冷静さをうしなっていないのかもしれない。
 プーチンの希望からいうと彼は5月9日の戦勝記念日までにドンバス地方で具体的な成果を上げ、「勝利宣言」をあげたかった。しかしそれは完全に失敗した。ドンバス戦線でロシア軍は攻めあぐみ、むしろ反撃を受けそうな状態だ。
 多くのマスコミは、6月になるとウクライナに西側諸国の支援武器が届き、反転攻勢が始まると述べている。マスコミの記事は各陣営の思惑に振り回されている可能性が高いから鵜呑みにすることはできないが、総合的に見るとロシアの勝利はないと考える人が今では大多数を占めていると思う。
 冷徹な見方をするとロシアのウクライナ侵攻はアメリカが仕組んだ罠にロシアが嵌ってしまったと考えるのが良いかもしれない。
 もっとも当初からシナリオライターがいて総てアメリカ有利になるようにお膳立てしたかどうかは分からない。ただここに来て総てのことがアメリカ有利に働いていることは間違いない。犯人捜しの鉄則は、その事件で一番メリットを受ける人は誰かということを考えるという鉄則があるそうだ。
 アメリカはここにきて多額の武器支援を行うことを決めて実行しているが、これはウクライナ支援という側面とともに旧式の武器の消費と実戦テストという面を持っていることは間違いない。弾薬等には保存期限のようなものがあり、一定年数を過ぎると廃棄処分されるはずだ。廃棄するよりは実地に使用し、その性能を確かめたいという希望がジェネラル・ダイナミックスのような兵器メーカーから起きても不思議はなに。連邦政府としても武器供与で特別予算措置を行うことは、税金が軍需産業に流れ込み、国際社会の中で米国のプレゼンスをあげながら、GDPの押し上げにも寄与すると考えるはずだ。
 それは「向こう10年程度は軍備再生に注力せざるをえないほどロシアを叩いておく」という米国の世界戦略にも適っている。
 ロシアを弱体化させ当面の敵国を中国に絞るというのが米国の世界戦略のはずだ。
 ロシアがウクライナ侵略で勝利を得ることはないというのは、先が見える人であれば誰でも予想できることだった。問題は舞台裏で振り付けをしているアメリカが「ロシアをどの程度叩いたところで幕引きを考えているか」という点だろう。
 ウクライナに代理戦争を担わせロシアの弱体化を図るシナリオの振り付けを書いた人がいるなら考慮して欲しいことは「窮鼠猫を噛む」ということだ。
 経済面や国家運営力では三流国のロシアだが、戦略核兵器を持っているという点では侮れない。つまり徹底的に崩壊させればよいというものではない。レガシーとなっている核兵器をきちんと管理できる政府を作るところまで面倒を見るという義務が米国やNATOに圧し掛かっているのかもしれない。
 中国やロシアに「核戦略ドリブンな強硬路線は機能しない」ことを知らせながら、彼等を窮鼠にせず、軟着陸を図るというのは100年ぶりの大仕事ではないだろうか?
 今現代史が熱く面白い・・・・
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日米の地下鉄の値段の推移を考えてみた

2022年05月09日 | うんちく・小ネタ
 ニューヨークへの旅が迫り、最新の情報を少し調べています。昔住んでいたので行けば何とかなるだろう、と高をくくっていたのですが、ダウンタウンを中心に街が変わり、地下鉄の乗り方が変わり、Uberなど新しい交通手段が増えているのでおそらく最初の1,2日は面を食らうことが多いと思います。
 中でも物価が高くなっているのにはびっくりします。
 一例がニューヨークの地下鉄です。私がニューヨークに勤務していた1990年代前半の地下鉄料金は1.25ドルでした。これが今では2.75ドルで25年で2.2倍になっています。同じ時期に東京の営団地下鉄の初乗り料金は120円から178円に上昇しています。これは1.49倍です。
 もっと驚くのが、メトロポリタンミュージアムの入場料がこの間に5倍も上昇していることです。私の記憶では四半世紀前の入館料は5ドルだったのですが、現在では25ドルです。
 ちなみに東京国立博物館の入館料は1991年には400円だったものが2020年には1,000円になっていますから2.5倍になっている訳ですね。
 日本の美術館の入館料は他の物価に較べると上昇率が高いと思いますが、メトロポリタン美術館の料金に較べると低いものです。
 一方手頃な資料(全労連が1995年から2016年の推移をグラフ化している)から日米の賃金の推移を考えてみました。
 1995年の賃金を100とした場合日本の賃金水準は89.7に低下し、アメリカの賃金水準は116.3になっています。
 アメリカは物価も上がるけれど給料も上がる国。日本はこれまでのところ物価の上昇は穏やかだったけれど賃金は伸びないどころか低下傾向(実質で見た場合)にある国です。
 その原因は人件費をできるだけ抑えて、製品価格やサービス価格の上昇を抑えてきたことにあります。一方従業員の流動性が高いアメリカでは能力の高い社員はより高い給料を求めてより高い給料を払うことができる会社に移っていきます。その結果高い給料が払えない会社は衰退し、場合によっては潰れ、場合によっては買収されます。
 短いアメリカ旅行ではそのダイナミズムを目にすることはないでしょうが、
 ひょっとすると飲食店のメニューの高さに目をむくんじゃないか?と多少心配になったりしています。
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