新聞によると政府はマイナンバーカードを使った保険証「マイナ保険証」の普及に力を入れ始めている。具体的には医療機関や薬局にオンライン資格確認のシステム導入を2023年4月から義務化すると明記した。また将来は現行保険証の原則廃止を目指すと述べている。
問題はここからだ。日本のあらゆる分野で電子化が効果があがらず、またしばしばシステムトラブルを起こす最大の原因は、電子化を進める一方で従来のアナログ方式を残すことにある。このためシステムを導入する側は二重三重の投資と運営上の負荷を負う。
具体例で考えてみよう。たとえばバスの乗車口でSuica等交通系電子マネーによる乗車が進む一方未だに現金払いをする人がいる。これを電子決済と定期券・シニアパスなどの提示に絞り現金乗車は認めないというように変えれば運転手や現金処理に携わるバス会社従業員の負担軽減につながり、また改札に要する時間が減少するので、バスの運行時間の短縮につながると思う。
実際海外では現金による乗車を謝絶し、現金で乗りたい人には切符の事前購入を求めているところもある。
しかしこのような議論を日本で持ち出すと必ず「Suicaを持っていない人はどうするとかSuicaを使えない人はどうする」という議論がでて前に進まない。たとえ一人でも現金払いでバスに乗る人がいる限り許さないと言わんばかりにだ。
現金重視の考え方は未だに新聞代金を現金払いにして集金人が個別訪問しているケースにも表れている。別に総ての世界の事情を調べた訳ではないので断言はできないが、こんな馬鹿げたことをやっている国を見つけることは難しいだろう。何故馬鹿げているか?というと集金人のコストは、自動引き落とし等効率的な方法で料金を払っている新聞購読者も負担しているからである。
このように電子決済と現金払いの共存、電子メールと前時代的なファックスあるいは郵便による連絡の共存などデジタルとアナログの併存が日本のデジタルトランスフォーメーションの足かせになっている。
こんなことを続けている限りシステムは肥大化しそのコストは国民一人一人の肩に乗っかかってくる。
このような無駄を省くためには、システムを一本化することである。政府が一部のためにするような議論を切り捨てて保険証をマイナンバーカード一本に絞るという位強い姿勢を打ち出さないとモノゴトは改まらない、と私は確信している。