昨日、「森友学園」問題関連で自殺した森本氏の妻が国と佐川宣寿元国税庁長官(以下佐川氏)を「自殺原因は決裁文書の改竄強制が原因」として損害賠償を求める訴訟の第一回口頭弁論があった、というニュースが流れた。
損害賠償請求に対し、佐川氏は「公務員が違法に損害を与えた場合、賠償責任があるのは国で、公務員個人は責任を負わないことが判例として確立している」と主張する答弁書を既に提出しているという。
私はこの佐川氏の主張について大きな疑問を持っている。
確かに、国家賠償法1条1項は「国または公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国または公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」
と規定している。また過去の最高裁の判例も公務員個人の賠償責任を認めていない様だ。
だがここで見落としてはいけない重要な条件がある。それは「公務員がその職務を行うについて」という職務が問題だ、と私は思う。
身を挺して危険に臨む公務員の方が誤って人を傷つけることはありうる。例えば消火活動に向かう消防車が乗用車と衝突するなど。あるいは「善かれ」と思って実行した経済政策が裏目に出て税金を無駄図解してしまうこともありうる。これらのことで公務員が個人賠償責任を負うとすれば、公務員になりたいと思う人はなくなってしまう。
いや公務員だけではない。会社員だって「会社のために善かれ」と思い「正しい手順に従って」行った行為については会社や株主から損害賠償を求められることはないはずだ。(いや正確にいうと請求されるリスクは常にあるが、最終的に敗訴するリスクは極めて少ないというべきだろう。)
だがもし会社員が不正を行ったり、上司が部下をパワハラした場合はどうなるだろうか?
これらはいずれもそれらの不正を行った社員が損害賠償で訴えられ、敗訴する可能性がある。
従って論点は「決裁文書の改竄」が公務員の職務に該当するかどうか?という点と「改竄という不正の強要」がパワハラに該当するかどうか?だと私は思う。そして「改竄が公務員の職務だ」と考える人はいないと思うし、「不正の強要がパワハラに該当しない」と考える人もいないのではないか?と考える。
司法に正義があるのなら、自殺者の無念を晴らしてあげたい。
すくなくとも裁判の入口で「公務員は何をしても個人賠償責任を問われない」といった身勝手な主張には断固とした反論を行うべきだろう。
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