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中国製は安いはもはや過去の話

2014年08月20日 | 社会・経済

昨日(8月19日)ボストンコンサルティング・グループBCGがリリースしたレポートによると、中国の生産コストが上昇する一方、米国とメキシコのコスト競争力が改善し、中国はコスト面の競争力を失いつつある。

米国労働省労働統計局等の資料に基づいて米国を100とした時の中国のコストは96だ。このBCGグローバル工業コスト競争力指数によると、米国より指数が低い国は、インドネシア93、インド87、メキシコ91、タイ91、中国96、ロシア99だ。

一方米国より指数が高い国はドイツ121、日本111、ブラジル123などだ。

この指数のコスト構成要因は「賃金」「電力」「天然ガス」「その他(為替レート)」となっている。アメリカが競争力を回復している理由としては、シェールガスの産出拡大効果が大きい。北米では天然ガス価格は過去10年間で25-35%ほど低下しているが、中国とロシアの天然ガス価格はそれぞれ138%、202%増加している。また産業用電力価格も同期間に中国とロシアでそれぞれ66%、132%上昇した。賃金については中国では過去10年で5倍弱上昇している。

企業が生産拠点を定める決定要因は生産コストだけではない。ロジスティクスや品質管理も大きな要因だ。

生産コストの差が数ポイントまで縮まり、更にトレンドとしては中国では賃金やエネルギーコストの上昇が見込まれる一方、米国やメキシコではエネルギーコストや賃金の上昇が緩やかなことを考えると、製造業の北米回帰がシフトが遠くない将来起きる可能性があるだろう。特に製造コストに占める人件費の割合が低く、輸送コストの割合が高い輸送機器部品等については、米国に製造拠点を戻す動きが起こりそうだ。

もし製造業の米国回帰が進むとすると、米国の労働市場は改善し、さらに貿易収支の変化や国際的な資本収支の変化が起こり、政治地政学的な風景も変わってくる。現時点でそこまで予想することは不可能だが、少なくとも「中国製は安い」という話は過去の常識に過ぎなかった、と米国人が感じる日はやがて到来しそうである。

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