CNBCによると、クリントン元大統領は、Clinton Global Initiativeという会合で、「将来米国企業は企業利益の極大化に関心を払うよりも、従業員と社会に対して注意を払うようになるだろう」と述べた。そして「我々は不均衡と悲惨と対立を共有し、繁栄と責任と共同体意識を共有するようになるだろう」と述べた。
元大統領は、この動きは政府の大きな関与なくして起こり、むしろ政府は企業にインセンティブを与えることで、この動きを促進することが可能だと述べている。
元大統領の意見に、出席した実業界のパネラー達から共感する声があがった。
例えばブラックストーンのJames CEOは会員制卸小売り大手のコストコは従業員を締めつけながら利益を捻出しようとしたことは一度もないが、非常に成功していると述べた。
またアリババの創業者Jack Ma馬雲氏は「私はつねに顧客一番、次に従業員、株主は最後に考えている」と述べた。
Jack Ma氏には次のとうな言葉もある。「知名度が高くても品質や品格の後ろ盾がなければ強いブランドとはいえない。知名度に相応しい質の高い製品やサービスを支える人材や企業文化を伴っていることが重要だ」
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企業のボトムライン(最終利益)を最重視し、株主価値を金科玉条にしてきたと考えられていた米国企業社会の中で何かが変わろうとする兆しが見えているのかもしれない。
企業利益のみならず顧客や社会の利益を重視しよう、という考え方は日本には昔からあった。たとえば近江商人には「売り手よし買い手よし世間よし」という「三方よし」という格言がある。
仮にクリントン元大統領の予想が当たるとすれば、米国企業を利益最優先から従業員や社会優先に替える「企業側の動機」は何なのだろうということを考えてみた。
一つは企業にとって、仕事を愛し創造的な活動をする従業員を確保することが、企業のイノベーション(新しい価値の創造)に必要だという判断だ。
もう一つは従業員や顧客を重視することで、リーマンショック後疲弊してきた大衆層に利益を還元し、持続的な消費社会を維持することが最終的には企業の長期的な繁栄につながるという判断があるのだろう。
あるいは「所得と資産の不均衡」が社会の臨界点に近づきつつあることをビジネスリーダーたちは感じ始めたのか?
日本の政財界のリーダーたちも「三方よし」のお株を奪われる前に、現代版「三方よし」の提案を考えるべきだろう。
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