今年から相続税制が変わり、課税対象者が5割くらい増える可能性がある。それ故一般の方の関心も高まっている。書店には相続関係の色々な本が並んでいて、どれを読んだら良いか?迷っている方も多いだろう。
そんな中で私が最近読んだ「相続に困ったら最初に読む本」(曽根恵子著 ダイヤモンド社)は、中々良い本だな、と感じたので紹介しておきたい。最初にお断りしておくが、私は著者と面識はないし、この「紹介」もあくまで私個人の意見である。
良い本だと感じる理由は次のとおりだ。
- 相続手続に関するプロセスが平易にかつ体系的に書いてあるので、相続に詳しくない一般の人でも分りやすい。
- 安易に専門家(弁護士・税理士・信託銀行等)に相談することを戒めている。そして「相続では、なにごともオープンにして家族のコミュニケーションを取りながら、選択決断し、専門家に手続きを頼むにしても、自分たちで選択、決断するのです」と著者は述べている。
この部分は大事なことだ、と私は考えている。というのは「相続」問題~あるいは「争族」問題~をビジネスにしようと狙っている「専門家」達が「相続ブーム」を引き起こしている側面があるからだ。
もっともこれは「相続」問題だけではない。「健康」「美容」「医療」「改築」など色々な分野でビジネスチャンスを掘り起こそうとする人々が、ブームを引き起こしている可能性がある。「専門家」に依頼する前に、顧客側がある程度知識を蓄積し、相談内容を整理しておかないと、コスト倒れどころか、カモにされて、とんでもないことになる可能性がある。
この本の著者は「相続コーディネーター」として、万を超えるコンサルティングを行ってきた人だが、最初に「専門家任せはいけません。自分でできることは自分でやりましょう」と書いている点が良心的だと思う。
複雑に見える相続手続だが、プロセスを分解していくと大部分は専門家に頼まずとも自分でできることが多い。そのためには、煩雑に見えるお役所の手続も時間があれば、日頃から自分でやるという習慣をつけておくと良い、と私は考えている。
具体的には税金の申告や簡単な登記申請(例えば抵当権の抹消など)などだ。最近はお役所の窓口の相談コーナーが親切になり、かなりの手助けをしてくれる。そのような手続きに慣れておくことで、専門家の利用の仕方も見えてくるというものだ。
広い意味で騙されないで生きるためには、それなりの努力が必要だ、ということを教えてくれる本である。
- 最後に著者は「キーワードは『不動産』と『相続の専門家チーム』で、不動産を所有する人は『不動産』の専門家に相談することが必要」と結んでいる。
不動産が相続問題のキーワードであることは間違いないが、「不動産の専門家」については慎重に考える必要がある。というのは「専門家」と言われる人も、不動産関連のビジネス(仲介・賃貸物件の建築・ローンなど)で飯を食っていることが多いからだ。本当は「私はコンサルティング報酬を頂きます。しかし私は顧客であるあなたの利益を第一に考え、忠実義務を守ります」というようなコンサルタントがいれば良いのだが・・・
本書とは離れるが「タダで相談に乗ります」という類の話は、顧客を自分のビジネスに誘導する魂胆だ、と考えておいて良いだろだろう。結局専門家を上手に使うには、クライアント側にそれなりの知識とコンサルティングフィーを支払う覚悟が必要なのである。世の中タダほど高いものはないのである。
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