来週ある大手新聞の記者と「銀行店舗の合理化」について意見を交換することになった。
私のブログを見て、「ご意見をお聞きしたい」という申し入れがあったのだ。光栄な話なので喜んでお受けすることにした。
記者の方の予見では「欧米の銀行の店舗合理化の影響を受けて日本でも合理化が課題になっている」というものだが、私は日本の銀行特に多くの地銀は、業務利益の低迷と更なる減少に備えて店舗の合理化は必須の課題だと判断している。
だがFinTeckの導入や店舗の合理化(店舗網の縮小や無人化)について欧米との比較で大きな壁がある。
代表的な壁は「普通預金の通帳」と「現金社会」という壁だ。
普通預金の無通帳化についてはメガバンクやゆうちょ銀行で割と積極的に進めている。だが通帳が完全に無通帳(ステートメントい方式)に切り替わらない限り、通帳発行(新規・繰越)という作業は残る。欧米の銀行でははるか昔から(あるいは当初から?)普通預金も当座預金と同じく無通帳だから、店舗(またはATM)で通帳記帳や繰越という作業がない。その分インターネットバンキングやモバイルバンキングと親和性が高い訳だ。
もちろん日本の銀行でもインターネット専業銀行や外銀は無通帳であるが、多くの邦銀は通帳・無通帳の併用または通帳オンリーであるから、インターネットバンキングを進めても、通帳発行コストや管理(記帳・繰越)コストは劇的には減少しない。
もう一つの壁は「現金社会」という壁だ。現金決済比率が低下している北欧では、現金廃止計画が具体化している。デンマークでは2030年までに現金廃止が決定している。
キャッシュレス先進国のスウェーデンでは2012年12月にSwishが導入され、国民の6割近くが既にSwishを使っている。
日本でもSuicaのような運賃支払いの電子マネー化は進んでいるが、大半の人はSuicaを現金でチャージしている。Suicaをオートチャージしている人の割合は5%に過ぎない。
以上のようなことを考えると、邦銀の店舗網の合理化のハードルは高いと言わざるを得ない。
「現金社会」の壁は銀行の努力だけで打破することはできない。「通帳」にも長い歴史があるので、簡単には無通帳化を進めることは難しいだろう。だがデジタル社会のメリットを活かすためには乗り越えないとならない壁なのだ。
「無通帳化については銀行の本気度が試されている」というのを私の一つの意見として、来週の意見交換に臨みたいと思っている。