ライフプランニングノートの重要な項目の1つは遺言書である。ただし遺言書が必要かどうかは家族関係や相続財産の種類、法定相続以外の相続をしたいかどうかという意思にかかわる。
市販のエンディングノートなどでは遺言書作成に力点を置いたものが多いが、これは遺言書作成や遺言執行業務により手数料を稼ごうと考えている業者の思惑が働いているので落ち着いて考える必要がある。
ところで最近はスマートフォンのアプリで簡単に遺言書を作成できるものが登場している(ただし自筆証書遺言を作成する場合はアプリで作成した文言を自筆で書く必要がある)。
そのサイトの一つ(司法書士事務所N-firstが作成)に「遺言書必要度診断」というサイトがあったので自分の遺言書必要度を診断してみた。
サイトは以下の項目のうち該当するものにレ点をいれなさい、というものだ。
「主要な財産は不動産のみ」「子がいなく、両親もすでに他界している」「再婚しているが、先妻との間に子がいる」「亡くなると相続対象者が大人数になる」「籍は入れていないが内縁関係にある」「個人事業主又は会社経営をしている」「ペットを飼っているが、自分に万が一のことがあった時が心配」「家族に障害を持ったものがいる」「自分の意思で残す財産の配分や割合を決めたい」「相続人同士で争いが起きないようにしたい」「相続人以外のお世話になった方に財産をあげたい」「慈善団体などに寄付を考えている」
この項目について私は該当するところがないのでそのまま「診断する」ボタンを押すと次のような回答が返ってきた。
「あなたの遺言書必要度は10%です。遺言書の作成を急ぐ必要はないと考えられます。ライフステージに合わせて遺言書を作成した方がよいと判断した際に、ご検討されてはいかがでしょうか」
前段で「遺言書作成により手数料を稼ごうと考えている業者が多い」と書いたが、この診断結果は極めてまともで公平である。因みに司法書士事務所に遺言書作成を依頼すると自筆証書で9.8万円公正証書で12.8万円の基本報酬+リーガルアドバイス費用などがかかる。
ただし診断項目の中に複数の該当項目がある人は遺言書作成の必要度は当然高い。遺言書作成の第一歩は遺言書作成の必要度と緊急度をチックすることからだ。
米紙を読むと「コロナウイルス蔓延で突然死の危険性が高まってきた。多少なりとも財産を持っている人は急ぎ遺言書を作成する必要がある」という趣旨の記事を目にすることがある。米国では日本の法定相続に該当する概念がなく(配偶者は概ね財産の半分を引き継げるが)遺言書がないと裁判所(牽引裁判所)が個別に財産分与方法を指定するので非常に時間がかかる。このため遺言書作成(またはより相続手続きを迅速にする生前信託契約)は必須と言われているが、法定相続分が定められている日本では「法定相続どおりに遺産を分配したい」と考えている人にとっては遺言書作成は基本的に不要である。
ただし相続財産が1個の不動産で相続人が複数いるような場合は財産の分割が難しいので争いが生じる可能性が高い。これを解決するのは、遺言書ではなく、むしろリバースモーゲージなどの手法を使って不動産を流動化しておくような相続対策であろう。
スマートフォン上にはライフプラン作成に役立つアプリが幾つかあるし、おそらく今後も新顔が登場するだろう。便利なので使ってみることをお勧めする。ただし製作者の意図を見抜く冷静さは必要だが。