金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ヒューマンスキルの要、人を動かすために動かない?

2021年01月08日 | ヒューマンスキル
 少し前からヒューマンスキルのことが気になっています。なぜか?というとコロナ対策で再びテレワーク拡大が求められる中、多くの企業がテレワーク拡大に悩みを抱えているからです。
 大手企業の中には昨年春~夏のテレワーク実施を通じて、インフラ面では整備を進めたところが多いでしょう。しかしPCやZoom等機器類が揃えばテレワークが進むといものではありません。担当者・チェッカー・決裁者が別々の場所で仕事をするため、ワークフローも変わるでしょうし、指示・質問・回答の方法も変わってきます。オフィスで揃って仕事をしている時は、言葉によるコミュニケーションだけではなく「空気を読む」というコミュニケーションの方法もありました。井戸端会議で上司や経営層の本音を探るという情報収集もありました。
 これらのコミュニケーションは無駄なものではなく、仕事を進めていく上で必要な潤滑油だったのです。
 しかしテレワークになるとこれらのコミュニケーション手段はなくなります。
 そしてそれ故に「組織の中できちんと情報を共有していく」ヒューマンスキルが重要になるのです。
 一般にヒューマンスキルは次の7つのスキルで構成されると言われています。
 「リーダーシップ」「ネゴシエーション」「プレゼンテーション」「コミュニケーション」「ファシリテーション」「リスニング」「コーチング」です。
 ところでヒューマンスキルって何でしょうか?
 私は一番シンプルな定義として「他人を動かして何かを達成する技術」と考えています。例えば「顧客にある商品やサービスを説明して購入してもらう」には「プレゼンテーション」や「ネゴシエーション」が必要になります。
 ところで部下や同僚に働きかけて、チームで何かを達成する時はどのようなスキルが必要でしょうか?
 もしあなたが何かを企画するとすれば、その企画を関係者にプレゼンする必要があります。しかし説明しただけでは腹落ちしないことが多いと思います。参加者には参加者の意見や立場があるからです。
 だから議論を通じて合意を形成してく必要があります。この合意形成にこぎつける技術がファシリテーションです。
 もっとも日本の会社では「腹を割った話は酒でも飲みながら」という風習がありますから、テレワークになると合意形成が進み難くなるかもしれません。
 また部下を働かすにしても、命令するよりは自発性を重んじて積極的にその仕事に取り組むようにする方が成果が上がることはよく知られているところです。つまりここではコーチングの技術が必要になる訳です。
 私は「ファシリテーション」「リスニング(傾聴)」「コーチング」では「相手の意見をよく聴く」ことがポイントだと考えています。自分が異なる意見を持っていても、黙って相手の意見を聞くことがポイントなのです。
 意見を聞くことで相手は自分が認められたと思い、最低限の信頼関係が生まれるはずです。
 テレワークの一つのハードルはこの「聴く」ことが難しくなっていることにあるような気がします。指示はメールやテレビ会議で出すことができるのですが、その指示が腹落ちしているかどうかは分かりません。
 相手が腹落ちしてこちらの希望どおりに動いてもらうには、実はこちらが動き過ぎないということがポイントなのです。顧客に何かを買ってもらいたい時に熱くなって売り込み過ぎると顧客は引いてしまう場合が多いと思います。
 同じように部下に対する過剰な指示は部下のやる気を殺いでしまう可能性があります。このような事態を避けるには「人を動かすために自分は一定期間動かない」という間の作り方が重要なのです。
 これがヒューマンスキルの一つのポイントです。ただし相手の顔を見ながらでも慣れないと難しい間の取り方をテレビ会議やチャットで行うには一層スキルが要ります。これがテレワークの一つの壁になっているのでしょうね。
 だから機材を入れただけでテレワークが進むと考えるのは間違いなのです。
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米長期債金利、インフレーショントレードで急上昇

2021年01月08日 | 投資
 日本では死語になっているインフレーショントレードInflation Trade。何か?というと将来のインフレを予想して、ポジションを取る取引を指す。
 アメリカではジョージア州の上院選挙で民主党が勝利して以来、長期債の金利が急上昇している。選挙前は0.955%だった10年債の利回りは昨日は1.07%に上昇した。理由は民主党が上院で過半を占めたため、大きな財政出動が期待されるが、政府には金がないので、大量の国債を発行せざるを得ない。大量の国債を消化するには投資家を満足させるため金利を引き上げざるをえない。だから長期金利が上昇するという読みだ。
 既にヘッジファンドは「短期債買いの長期債売り」戦略で動いている。この戦略は長期金利の上昇で長短金利が拡大するという予想に立っている。債券の買い持ち・売り持ちを両建てするので、金利水準が上がっても下がってもニュートラルに作用し、金利差が拡大すると儲けがでる(金利が上昇すると長期債の価格が下がるので、安く買い戻すことができる)訳だ。
 アメリカはマーケットも政治もビジネスもコロナの中で生きていると私は思う。「生きている」という意味は敏感に反応し、困難の中からチャンスを見出す活力がある、ということだ。
 昨日起きた国会議事堂への暴徒の乱入は決して褒められたことではないが、政治が熱いという点は注目してよいと思う。
 企業もコロナに対応するべく、ビジネスチャンスを探して、果敢に打って出ている。巣籠宅配ブームで売り上げを伸ばしているのはアマゾンだけではない。コストコやウォールマートもインターネット注文⇒店舗で受け取りなどで売り上げを増やしている。オンライン診療も急増している。
 つまりコロナをイノベーションの機会ととらえているのだ。
 在宅勤務についても日本では平均的にはマイナスのイメージが強いが、アメリカでは肯定的な見方が多い。肯定を前提に考えると、どうすればリモートワークのマイナスを回避できるか?という技術論がでてくる。その技術論が、ネットワーク技術を発展させ、ヒューマンスキルなど社会心理学分野の研究と実践を拡大する。
 悲しいかな、これに較べると日本ではコロナをイノベーションの機会ととらえる機運が乏しい。マーケットも然りである。ならばやはり活気のある米国市場にコミットせざるを得ないのである。
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