金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

堅調な小売売上高、ウォールマート好決算などで米国株躍進

2024年08月16日 | 投資
 昨日(8月15日)米国株は続伸した。S&P500は1.6%、ダウは1.4%、ナスダックは2.3%だ。
 これで米国株は8月5日の世界的な株価急落前の水準に戻った。
 WSJは「3つの新しいデータが、米国経済のバックボーンである消費支出が持ち応えていることを示し投資家に安心感を与えた」と報じていた。
 3つのデータとは7月の小売売上高、失業保険申請数、米国最大の小売業ウォールマートの好決算だ。
 7月の小売売上高は、その前の月より1%増加した。これはエコノミストの事前予想(0.3%)を上回った。中身を見ると、システムの不具合で6月の売上が落ち込んだ中古車がその反動で売り上げを伸ばすなど一時的な要因もあるが、市場は素直を好感した。
 ウォールマートは、第2四半期(5~7月)の米国内既存店売上が4.2%増加(アナリスト予想は3.4%)したことや業績予想を引き上げたことが好感され、株価は7%近く上昇した。大手小売業の中で同社は今年の株価上昇率でコストコと1,2を争っていたが、今回トップに立つことができた。
 グーグルファイナンスのデータをそのまま転記すると今年の株価上昇率は、ウォールマート37.8%、コストコ34.8%だ。これはS&P500の16.8%を大きく上回る。またマイクロソフト、アップル、アマゾンといったマグニフィセント・セブンの主要メンバー(ただしNvidiaなどを除く)を大きく凌駕している。
 さてWSJによると、このような経済データは連銀が9月のFOMCで政策金利を0.25%引き下げるだろうという期待を高めたと報じている。CMEデータによると、0.25%引き下げの見込みは77%で前日の64%より上昇した。これは経済のクッションのために0.5%の金利引き下げが必要と判断していた人の割合が減ったことによる。
 債券市場ではベンチマークの10年国債利回りが3.821%から3.924%に上昇した。
 ところで物価の沈静化と政策金利の低下は、政治にどのような影響をもたらすと考えて置いたらよいだろうか?
 昔仕事でマーケットを見ていた頃、大統領選挙の前に住宅ローン金利が上がるようでは、現職大統領は選挙に勝つ見込みが覚束ないという話を聞いたことを思い出した。
 そしておそらく物価上昇トレンドが続いているとさらに現職大統領は苦戦するだろう。
 実際トランプ氏は選挙活動の中で、バイデン政権下で物価は滅茶苦茶に上昇したとかなりデタラメなデータを示して演説を繰り返している。
 しかしここにきてインフレの鎮静化が顕著になり、しかもリセッションを避けながら、政策金利の引き下げを行うことになると、トランプ氏は経済問題を争点にし難くなるだろう。
 経済環境がハリス候補に追い風になり始めたことは間違いない。
 ところで大統領や首相などトップの政治家が短期的に物価や景気に大きな影響力を持っていると私は考えていない。
 昨日岸田首相は自民党総裁選に出馬しない(つまり首相を辞任する)ことを表明した。国民の政治資金に関する疑惑を晴らすことができず、自民党への支持率を提げたことが原因だ。支持を提げた理由の中には、物価高や賃上げ問題に対処できなかったことも含まれているが、これをすべて岸田首相の責任にするのは公平を欠いていると私は考えている。
 一人の首相にこれほど大きな問題を解決する力はない。実は日本経済の低迷の最大の原因は「同一労働同一賃金の原則」を貫徹できないことにある。この原則を徹底すると、雇用の流動化やゾンビ社員とゾンビ企業の撲滅が起こり、経済が活性化していく。ただしこれには既得権者の抵抗が強い。政治資金問題もこのような文脈で考える必要がある。
 米国株高につれて日本株も値を戻しているが、経済のバックボーンである個人消費はどうだろうか?
 イオンなど日本の大手小売業の株価パフォーマンスをウォールマートやコストコの株価に較べるとまことに貧弱だ。バックボーンが弱っていると実感せざるを得ない。これは余談だが私は日本の大きな問題は「リスク回避行動が続き過ぎる結果、最後に極端なリスク(ほどんどリターンの見込みのない自暴自棄的な行動)をとる傾向がある」ことだと感じている。
 
 
 
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ウクライナのクルスク侵攻を「孫子の兵法」から考えてみた

2024年08月15日 | ニュース
 先週(8月6日)にウクライナはロシアのクルスク州へ侵攻した。ウクライナは比較的容易に進撃し、国境を制圧した。ロシア国防省によるとウクライナ軍はロシア領内に30km侵攻した(アルジャジーラ8月12日)。
 ウクライナの突然のロシア領内侵攻については「意図不明」という報道が見られたが、アルジャジーラは「ウクライナの侵攻は戦争の力学を変えたのか?」という記事で、ウクライナの侵攻意図を推測している。
 その記事を「孫子の兵法」に照らし合わせながら読んでみた。
 
 退役戦闘機パイロットで軍事アナリストのSean Bell氏は「一つの理由は主導権を握る」ことだという。そして第二に「ロシアだけがこの戦争をコントロールしているのではなく、ウクライナも手綱を握っている」ことを示すことだという。
 またBell氏はウクライナの侵攻により、ロシアはドネツク州の前線から一部の部隊をクルスク州に振り向けたので、ドネツク戦線におけるウクライナのプレッシャーは軽減されたことになる。
 これは将棋でいえば、盤上を広く見渡し、駒と駒がぶつかり合っている激戦地での圧力を緩和するために、別方面から敵陣への攻撃を進めるようなものだろう。
 「孫子の兵法」から見ると、まずこれは虚実編(第六)の冒頭に出てくる「善く戦う者は、人に致して人に致されず」に該当する。この文章は戦争上手は、主導権を取り、自分の書いたシナリオの沿うように相手の行動を導くという意味だ。
 さらに言えば戦争の目的は個々の戦闘に勝つことではなく、外交目的を達成することにあるから、外交交渉でイニシアチブを確保するためには、戦争でも主導権を確保~すくなくとも完全に相手に奪われることがないように~することが肝心だ。
 また孫子は戦いは自国の領土内でやるべきではなく、敵地で展開するのが理想だと述べている(九地編)。なぜなら自国の領土で戦うと領土が荒廃するからだ。
 この点からもウクライナのクルスク侵攻は、孫子の兵法の理に適っているということができる。
 ただしである。ロシアが兵力を集結し、クルスクで占領された領土の奪回とウクライナ軍の殲滅を狙った大規模な攻撃を仕掛けるとこの方面のウクライナ軍の優位は転覆する可能性が高い。そしてウクライナは戦争の主導権と外交の主導権を失う可能性が高まる。
 ところで「孫子の兵法」は、相手国との戦力比較で第一に「道」をあげている。道とは大義名分だ。私はこの戦争はウクライナに大義名分があり、ロシアには大義名分はないと判断している。もっともロシア国民を含め、ロシアに大義ありという人もいるが。そして勝敗を決するの「道」だけでなく「天」「地」「将」などがあるので、実社会では大義名分がある方が勝つとは限らない。
 ゆえにこの時点でウクライナのクルスク侵攻が、ウクライナの主導権奪還につながるかどうかはまだ判断できないと私は考えている。
 
 
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ピータッチキューブ(ラベルライター)で整理は進む?

2024年08月14日 | うんちく・小ネタ
 猛暑でお盆のこの時期、スポーツクラブは休みですし、モールなどに出かけても大勢の人で食事をするのも大変です。
 そこでクーラーの効いた部屋でできる作業として思いついたのが、小物やファイルの整理です。
 ものを整理していくには、名前や用途などを他人にわかるようにラベリングしていくことが始まりだと思います。
 そこでラベルライターを探したところ、ブラザーのピータッチキューブという商品を手頃な値段(5.2千円ほど)で手に入れることができました。
 自分の拙い字でラベルを作っていっても整理した気にならないのですが、プリントされたラベルを見ると整理が進むんじゃないか?と思います。
 まあ、活字病でしょうか(笑)?
 手始めに名前ラベルを張り付けたのは、デジタルカメラのバッテリーです。 これはトレッキングのときなどに他の人の持ち物とまぎれるのを防ぐ予防処置です。またケーブルへのラベルは、接続機器(カメラ)の名前を書いたものです。
 スマートフォンと連動して簡単にラベルが作成できるピータッチキューブ。
 一時の遊びで終わるか?本格的な収納整理に結びつくか?はまだ分かりませんが、道具を買ってから何ができるか?と考えてみるのも面白いですね。



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最大傾斜13度の坂はすごい。パリマラソンコース。

2024年08月12日 | うんちく・小ネタ
オリンピックの中で見始めると最後まで見てしまうのがマラソン。今回は男女とも日本人選手が入賞圏内を走っていましたので特にテレビの前に釘付けでした。それにしてもこのコースの最大傾斜13度というのは凄いですね。今日ジムのランニングマシーンで13度の斜面を作って歩いてみましたが、少し歩くとふうふうです。走るなんてトンでも、です。
13度という傾斜は高尾山のローブウエイ山麓駅から山頂駅まで琵琶滝の横を経由して登るコース(斜度14.3度)よりやや緩い位です。多くの人が歩いて登る1号路の斜度は9.9度ですから、パリマラソンを走る人ならかけ登るのではないでしょうか?
一流の選手は凄い、と改めて思った次第です。



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ネパール人女子高生に「おぼん」の話をした

2024年08月12日 | ライフプランニングファイル
 コロナの頃から断続的にオンラインで日本語レッスンを行っているネパール人の女子高生がいる。
 日本語レッスンといっても、文法や日常会話を体系的に教えている訳ではない。それよりも日本の文化、伝統、東アジア史の話などをしている。何故ならこの女子高生は、将来アメリカの大学で国際関係論を勉強して、外交官になりたいという夢を持っているからだ。
 色々な国の文化や伝統を学び、その文化や伝統を自国や他の国と較べて、幅広いものの見方を養う上で多少なりとも貢献できれば良いと私は考えている。
 季節柄日本のお盆の話をした。
 お盆というのは8月13日から15日にかけて(地方によっては時期は7月のところもある)、先祖の魂が自分の暮らしていた家に戻ってくるので、その魂を迎える宗教的行事のことだ。
先祖の魂の乗り物として、胡瓜や茄で馬や牛を作って仏壇にお供えをする風習もある。
 もっとも我が家の場合、40年位前に故郷の京都を離れ、東京の郊外に住んでいるので、先祖は勿論のこと両親もここに帰ってくることはないだろうから、お盆の行事はおこなっていない。

お盆は、仏教が伝来する前より日本人が持っていた祖霊信仰と仏教が融合したものだ。インド生まれの仏教の本筋からいうと人は死ぬと生前の行いの良し悪しにより、何かに生まれ変わる。かならず何かに生まれ変わるのである。
 仮にある人が馬に生まれ変わったとしよう。その人の魂がお盆の間、自分が暮らしていた家に戻っているとすると、馬はどうなるのだろうか?魂を失った馬は馬小屋で眠り続けているのだろうか?
 つまりお盆という考え方と仏教の輪廻転生とは論理的に相いれないのである。 
 日本では死者の霊は、死後数十年は家の近くの森などにいて、お盆の時期には簡単に自分の家に戻ることができると考えられてきたのだ。
 こんな話をして「ネパールにも同じような習慣はある?」と聞いてみた。
 すると答は「お盆のように総ての死者が一度に家に戻るという考え方はないけれど、それぞれの死者の祥月命日には死者の魂を祭るという風習はヒンドゥー教にもある」という話だった。
 輪廻転生とお盆のたびに魂が暮らしていた家に戻ってくるという考え方は、論理的には矛盾しているところがある。しかしそれはそれほど重要なことではないかもしれない。
 重要なことは、死者の霊を弔うことにより、自分たちの生きている意味を見つめたり、家族や親せきが一同に会することなのだ。
 私はそれからキリスト教(特に米国)では、感謝祭が日本のお盆のようなもので、各地に散らばっている家族が一同に集まることが多いという話をした。
 宗教の教義や習慣は、それぞれの宗教や社会によって異なる。だが一番大切なことは、教義ではなく、その習慣を通じて私たちが、はるか昔からの命のつながりの中に生きていて、さらにそのバトンを将来へ渡す役割を担っていることを知ることだと思う。
 そんな話をしたが、それがネパール人女子高生に届いたかどうかは分からない。
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