ウオール・ストリート・ジャーナルによれば日本の個人投資家がドル高を支える一翼を担っているということだ。もっともこれは前から言われている話なのだが為替相場を読む上で考慮するべきファクターだから記事のポイントを見ておこう。
- アナリスト達によれば多くの日本人投資家は近時の円高にもかかわらず外国通貨と株式を買い続けており、これがドル下落の障害になっているということだ。
- 米国での利上げが直ぐにでも止まるのではないかという憶測からドルは火曜日に113円41銭と3ヶ月振りの安値を付けた。しかしそれ以降アジア時間の取引で安定し114円12銭と高値を付けた。
- 外国為替取引業者筋によれば円高が進んでいるにもかかわらず外国為替保証金取引をする者はドルやその他高金利通貨に資金を置いている。外国為替保証金取引は数年前日本で開始され、個人がレバレッジを利かせて為替取引を行なうことができるようになっている。この取引では大きな利益をえることができるが同時に大きな損失をこうむる可能性もある。
- 外国の高金利通貨建ての債券に対する日本人の購入意欲は持続している様だ。JPモルガン・チェース銀行によれば今月17本の日本の個人投資家向け外貨建て債券が売り出される。これは昨年同月の14本や一昨年の6本よりも多い。
- 先月中頃円が高金利通貨に対して急激に上昇して、外国為替保証金取引で高金利通貨に投資していた多くの日本人投資家は損失を被り、それらの人の中には失望して為替取引をやめた者もいると業界筋は言う。その結果米ドル、豪ドル、ニュージーランドドルに対するロングポジションは減少した。しかしその後少しずつながら買いが回復し結果としては為替保証金取引を止めた人より新しく始める人の方が多くなったと業界筋では言う。
- アナリスト達は日本の為替保証金取引をする連中の増加するプレゼンスを無視するべきではないと言う。彼等は東京外為市場のスポット取引の1割あるいは3割のシェアを持つと見積もられる。
外国為替保証金取引とは為替相場を張る個人が保証金を為替取引会社に預け10倍程度のレバレッジをかけて為替取引をするというものだ。つまり1ドル100円として説明すると外貨預金で1万米ドル運用するには100万円の資金が必要で仮に10円円安になると10万円儲かる。これに対し保証金取引では10万円の保証金で1万ドルの投資ができるので10円円安になると10万円儲かるという仕組み。従って100万円使うと100万円儲かる可能性がある。ただし同時に同じ金額だけ損をするリスクがあるというものだ。
為替取引は結構人気があるらしい。一つは24時間どこでも取引が出来ること。又分かり易さも人気の理由かもしれない。ただし取引がし易いことや一見した分かり易さと長期的に儲けられるかどうかということは別だ。
私は個人的には外国為替に絡む仕事もしてきたし今でも関心のある方だが個人の保証金取引はやったことがないし余りやろうとは思わない。
その理由は3つ。
- 公平に見て外為で相場を張り儲かる期待値(統計的な意味で)はゼロ(つまり円安・円高になる確率は半々ということ)なので長期的には手数料の分だけ損をする。
- 外国株や外国債券等の実物投資であれば円高が進行しても投資がゼロになることはない。しかし保証金取引では急激に市場が思惑の反対に動いた場合ストップロスにかかり保証金がゼロになる可能性がある。
- もし保証金取引のような短期の相場を張るとそちらに心を奪われ仕事や他の楽しみに集中できない。
それにしても日本人っていうのはかなり相場が好きな民族なのだろう。世の中にはかなり多くの金融リスクを取りたがらない保守的な人とその正反対に極めて多くのリスクを取りたがるディトレーダーのような人と少数のほどほどのリスクを取る長期的投資家がいる訳だが、日本の場合は保守派とリスクテイカーが際立っていて、長期的投資家が少ないのが特徴なのかもしれない。