中央青山監査法人が2ヶ月の業務停止を受けた問題は、会計スキャンダルの元祖である米国でも関心が高い出来事らしい。ウオール・ストリート・ジャーナルがこの問題について記事を書いている。まずはポイントを紹介してからコメントを述べよう。
- エンロンとワールドコムの会計スキャンダル問題を修復することは、それまで監査対象企業に寄り過ぎていた米国の監査法人を金融・財務の監視人という監査法人の伝統的業務に戻すことを強いることになった。今日本の当局は世界第二の経済大国で同様の変革を試みている。
- 先週金融庁は、プライスウオーターハウスの関連会社である中央青山監査法人について、先例のない2ヶ月の業務停止を命じた。
- 日本の法律と企業統治の専門家であるコロンビア・ロースクールのミルハウプト教授は「過去において日本では監査法人と企業トップとの関係は金融・財務の完全な正確性よりもはるかに重要だった」「しかし今日本の当局は監査法人にもっと独立性を持つことが必要というメッセージを送ろうとしている」と言う。
- 金融庁の中央青山に対するアクションは、金融市場に一層の透明性を持ち込み、排他的な企業社会において企業統治を改善し、馴れ合い気味の日本の会計業界を強化しようとする金融庁のより広い努力の一部である。
- 実際中央青山に対する制裁は、他社に影響を与えるという懸念を招き日本の株式市場に圧力を与えたが、市場はその後回復している(注:その後円高や米国株式の大幅下落等で株式相場は大きく下げている。市場が中央青山問題をすんなりと消化したかどうかは不明だと私は思っている)
- 中央青山の顧客の中には大京の様に監査法人を変えるところもでているが、プライスウオーターハウスの上部組織のスポークスマンは「多くの顧客はプライスウオーターハウスを選び続けてくれることに引き続き自信がある」と語っている。プライスウオーターハウスは他の世界的な会計法人と同様に単一の企業体ではない。各々の国の会計法人は法的には独立したパートナーシップであり、世界的な傘(アンブレラ)組織がネットワークを調整している。
- 情報筋によれば、プライスウオーターハウスは中央青山と競合する新たな監査法人を日本に7月までに設立する計画である。これは中央青山の問題に呼応するもので、「国際的なオペレーションを持つ日本の企業がプライスウオーターハウスの他の部門と仕事をしたいと望むかもしれない」という懸念を反映している。
- 昨年9月以降、金融庁の公認会計士・監査審査会は世界の4大監査法人(プライスウオーターハウス・デロイト&トッシュ・KPMG・アーンス&トヤング)の日本の提携先を検査してきている。金融庁は6月後半に監査法人の監査の強化と独立性に関するレポートを発表すると予想されている。日本のメディアに対して当局は「4大監査法人の提携先を含む日本の監査法人は企業の詐欺に対して準備不足かもしれない」という当初の検査の印象を伝えている。
- 2004年に法改正が行なわれているが、日本では監査人が仕事をする方法を変えることは中々難しい様である。日本の丸橋弁護士は「日本では監査法人は顧客の求めに合わせて仕事をする」「法律で禁じられていることでも顧客企業が求めると、監査法人はやってしまうことがある」と言う。またコンプライアンス問題のコンサルをするコンプライアンス・アジア社の責任者は「4大監査法人関係以外の監査法人は相対的に小さく、彼等の中の幾つかの顧客は監査法人の収益に極めて重要な影響を持っている」と言う。
- しかし観察者達は日本の監査法人を強化する動きはやがて実を結ぶと希望的な観測をもっている。
ここから先は私見であり、別のブログでも述べているところなのだが、市場型資本主義というものは結構人手とコストがかかる資源の配分方法なのである。人手とコストだけを見れば、旧大蔵省主導の日本型資本主義の方が安上がりだったかもしれない。市場型資本主義では、企業の業績が正確にかつ他社と公平に比較できる形でタイムリーにかつ公平に投資家に伝達されることが極めて大切である。そのために企業も監査法人も緊張を保ち、それなりのコストも負担していかなくてはならないということである。
ここ暫くは日本株市場はぱっとしないだろうが、これもまた長い発展のための地固めだと思う。