金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

今の相場下落は恐れるに足りず

2006年05月26日 | 株式

た今日の日経新聞のマーケット欄を見ると、投資資金、リスク回避鮮明という見出しの下「海外投資マネーの日本離れがじわじわと強まっている」「原因はインドにある。インドの株式相場は直近のピークから2割近く下落」と続いている。ではその先どうなの?と思うがそこは新聞なので、将来のことは書いていない。たまたま今日は金曜日でエコノミスト誌の記事が更新され「ボラティリティのバイアグラ」という題名で、ボラティリティの高まる金融市場をどう読むのか?ということが取上げられている。ポイントを紹介して見よう。

  • 今週トルコ、ロシア、ブラジル、インドの様な新興株式市場で投資家達はここ数年積上げた巨大な利益を取ったため、これらの市場で急速な価格の下落が起こった。

ここでエコノミスト誌が新興市場における投資家の利益確定売りで値段を下げたと分析しているのは注目点だ。エコノミスト誌の記事は終わりの方で次の様に述べている。

  • モルガン・スタンレーのニューマン氏によれば「ラテンアメリカ諸国では多額の利益がかき集められるのを待っている。2003年の1月から今年の5月1日の間に、ブラジルの株式市場は米ドルベースで490%上昇、同じくメキシコが219%、コロンビアが716%上昇した。これ程株価が上昇しているので、これは利益確保の売りで懸念は少ない。もし本当の懸念があるとすれば、世界的な景気後退の入ろうとしているかどうかだ」ということだ。

エコノミスト誌の論調は5月中旬の世界的な株式相場の下落にそれ程懸念を抱いていない様に見えるが、ボラティリティの高まりは金融相場の先行きの見通しが以前より格段に難しくなったと述べる。

  • 株式市場の下落は、多くの複合した理由で起きている。ある人は米国の4月のコア消費者物価が、予想外に高かったことでインフレ懸念が高まっていることに理由を求める。しかしこのことは米国の株価のパフォーマンスが相対的に良好であることや、インフレに弱い債券が買われていることを説明できない。
  • 他の人はムードが急変し、投資家がリスクの高い資産を忌避しだしたという。これはこじつけに聞こえるが、ある程の理由付けになっている。(株式の様に)リスクの高い資産のボラティリティが高くなっているということは、リスク資産投資で損失を被る可能性が高まっていることを意味するからだ。そこで質への逃避が起こる。しかし一定のパターンを見出すことは難しい。例えば新興市場の債券は新興市場の株式よりもあるかにパフォーマンスが良い。
  • 世界的な金利上昇が世界経済の微妙な調和を転覆させると懸念に理由を求めるのは、最も信頼できるだろう。米連銀のバーナンケ議長はちょっと当てにならないスタートを切り、市場は彼がどれ程インフレに強固に立ち向かうか良く分からない状態である。
  • 過去2年間は金融政策の予想が簡単で、投機家は安い資金を借り、新興市場に投資してきた。四月までは株式市場のボラティリティが極めて低く、ヘッジファンド・マネージャー達にとって追い求めるトレンドというものがなかったのである。今金融市場はボラティリティのバイアグラを発見した。資本市場で総てのものは予想可能ではなくなった。トレーダー達はデリバティブの理解を深めなければならない。

なおエコノミスト誌は最後にこういう。

5月に株を売り、立ち去るものは幾らかの金を残すかもしれない。しかし彼等は将来多くの楽しみを失うだろう。

それにしても何時も思うことだが、アナリストやストラテジストといった類の人が言うことは余りあてにならないものだ。彼等は相場が上がりだすと上がる理由を探し、下がり始めると下がる理由を探し始めるのである。この中でエコノミスト誌の見方はやはり中々のものだろう。ここは天井買わずの底売らずという格言の底売らずということに着目して置きたい。

コメント
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