ゴールデンウイークは栂池から白馬岳に登り、頂上直下の白馬山荘で一泊し、翌日大雪渓を滑る計画を立てた。相棒は山岳部の後輩N君と会社の後輩M君である。この3人での登山も結構な回数になってきた。なお今年はつい最近も針ノ木雪渓でも大きな雪崩事故があった様に豪雪のため谷の状態が不安定である。従って大雪渓の状態や天気次第では往路を戻る等の弾力的な対応を取ることにした。
さて別件(甘利山登山)のある私より先にN,M君は入山。両名は4日の昼頃栂池に到着して、ヘリコプターで天狗原に飛び、白馬乗鞍岳に登り、そこから栂池ヒュッテまで滑り込んだということだ。泊まりは栂池ヒュッテである。私は栂池に4日の午後7時前に到着。予約しておいたカントリー ジョーなる民宿に宿泊。相客なく貸切である。この話は別のブログにしよう。
5日の朝、8時30分始発のヘリコプターで私は天狗原に到着。ヘリコプターのフライト料金は9,500円、少々高いが1千mの高度を5分で運んでくれるのだからありがたい。将に時は金なりである。
9時少し前に登山開始。天狗原から乗鞍岳には正面の雪の急斜面をつぼ足で直登する。シールを使っている人もいるがつぼ足の方が速い。乗鞍岳の頂上は岩が露出しているので、夏道を辿る。しばらく行くと白馬大池が見えてくる。といっても池は完全に雪の下。それどころか池の畔の白馬大池山荘は完全に雪の下で屋根の姿すら見えない。我々は大池の南端を通り、小蓮華岳に向けてまた急な斜面を直登する。先頭を登るN君はホイホイ行くが彼はただならぬ男である。しばしばフルマラソンに出場している様で、どういう計測方法かは知らないが全国の同世代(50歳だろう)の中で20数番目の体力を有するというお墨付きを貰ったそうだ。
さてそのN君をかなり待たせながら、僕とM君は12時40分に小蓮華岳に到着。風が強いのと、スキーやアイゼンなどを担いでいるので夏のコースタイムを少しオーバーした位の歩行ペースだった。このペースだと白馬頂上を越えて白馬山荘に入るのに後2時間はかかる。頂上に近づけば風はますます強くなりそうだ。第一栂池ヒュッテの人の話では大雪渓はデブリ(雪崩の残骸)が、多く快適な滑りが望めないということだ。そこでM君を待つ間N君と相談して、山頂行きは止めて今日金山沢を滑降することにする。やがて到着したM君もこの案に賛同。午後12時50分頃滑降を開始する。
写真は小蓮華岳の頂上から見た白馬岳(右)と杓子岳(左)だ。さて小蓮華の頂上からはしばらく登ってきた尾根を忠実に滑り、金山沢の上に達したところから滑り込む。金山沢の小蓮華寄りは岩場になっているので、余り早く滑り込むのは厳禁だ。
この写真は金山沢中間部の緩傾斜面を滑るテレマーク3人組(別パーティ)の写真を撮ったものだ。自宅で金山沢の傾斜を計算してみると、水平距離が2,750mで標高差が1,200mなので、平均斜度は24度弱になる。傾斜は出だしが特に強く35度程度はある。だがそのスケールと高度感を写真でものにするのは難しい。
金山沢の核心部は30分位で滑ってしまった。雪崩が出た形跡はないが、急傾斜の谷に長居は禁物である。金山沢は右岸(上から見て右側)からのブロック雪崩に特に注意する必要があるだろう。
写真は金山沢の最下部から上部を見たものだ。右側に豆粒の様な山スキーヤーが見える。雪面全体が茶色っぽいが、黄砂の影響があるのかもしれない。白馬尻林道終点付近には1時40分頃到着。滑降時間は休憩を入れて1時間だ。ここから猿倉までは途中逆傾斜でスキーが滑らないところも若干あるが、概ねスキーを活用して正味20分程度で下る。私は白馬尻で谷を渡る涼風に今日一日の疲れを癒していたが、若い(と言っても相対的な話だが)N,M君は猿倉を目指して飛ばしていった。
猿倉からはタクシーでマイカーを止めている栂池に戻る。料金は5,140円だった。
図は登行・滑降ルートを示したものだ。金山沢の上部の傾斜は35度以上あるが、雪崩の形跡はなかった。ただし山は生き物であるからその時々の判断が必要だ。私のこの話も参考程度ということで。下部の雪がやや少なくなったところでは、私は左岸(下に向かって左側I)を滑った。右岸にはブロック雪崩の形跡があるからだ。
金山沢は私が過去滑った中でも、中々良いスロープだったと思う。白馬岳の頂上を割愛したが、補って余りあると言うべきかもしれない。