金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

小沢代表の議論、アバウトだなぁ

2007年01月30日 | 国際・政治

昨日衆院本会議で代表質問に民主党の小沢代表が冒頭「日本は世界で最も格差のある国になった」と発言した。これに対して安倍首相やマスコミも特段コメントをしていない様だが、随分アバウトな発言である。まず何を持って格差というのか?フローかストックか?同世代間の格差か?異なる世代間の格差か?等々。次に小沢発言の統計的根拠は何か?

だがその前に格差は全くいけないのか?それともある程度の格差は経済発展のドライバーなのか?日本ではこんなことについても基本的なコンセンサスがない様な気がする。つまり国会の場で空理空論が繰り返されている。

では本当の意味で先進国の中で所得格差が最も大きいと推定される米国ではどういう議論と政策が取られているのか?

無論米国でも保守党はより所得格差問題に楽観的で、政府による所得再配分に消極的であり、民主党はその逆である。しかしその間の考え方の差はそれ程大きくない様に思われる。例えばある米紙の記事によると米国の保守党支持者の92%は勤勉と根気により、不利な状況は克服されると考え、民主党では65%がそう考えているということだ。

具体的な政策になると今下院で民主党が最低賃金の引き上げに動いていて、現在1時間5.15ドルの最低賃金を7.25ドルに引き上げる法案が上院でも超党派的に可決されるらしい。(もっとも最低賃金の引き上げが、真に所得格差是正につながるのかどうかという点で議論もあり、多分に政権末期のポピュリズム的な対応とも言えるかもしれないが。)

格差問題について国会で哲学(しかも根拠がなくレベルの低い)論争をするのではなく、やる気があり努力する低所得層の待遇を改善する具体的な施策を討議して欲しいものである。この点で私は一定範囲を超える残業代の割増率を増やす法案については良い法案であろうと考えている。欧州ではこの法案が若年層の雇用拡大につながっているからだ。

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シティバンク、日本での復活なるか?

2007年01月30日 | 金融

日経は本日(1月30日)の朝刊でシティバンクが日本で銀行持ち株会社と現地法人銀行を7月設立すると発表したと報じている。そして現地法人銀行の設立で支店の設置手続きは認可から届け出に変わるので機動的な出店が可能になるという在日CEOダグ・ピーターソンの談話を簡単に紹介している。だがシティバンクの狙いはこれだけだろうか?

オンライン・ウオール・ストリート・ジャーナルははるかに詳しくその背景を説明しているので少しポイントを見ておこう。記事の書き出しはCiti may be on the prowl in Japan. Prowlは「何かを求めてうろうろする」「徘徊する」という意味だ。シティは何を求めて徘徊しようとしているのだろうか?

  • 持ち株会社という新しいストラクチャーの下で、シティは会社~日興コーディアルはその候補の一つだが~を買収し、オペレーティング・ユニットとして傘下に置くことが出来る。(現在のストラクチャーではマネジメントの重複があるが、持ち株会社にするとなくなる)
  • この動きはシティが海外市場を将来の成長のキー・ドライバーと見ていることから来ている。シティのCEOチャールス・プリンスは向う5年間で国際部門収益の割合を現在の44%から60%に拡大しようとしている。
  • シティは日本で金融庁よりプライベート・バンキングの閉鎖を命じられるなど法的・金融的な挫折があり、再構築を模索している。シティによれば昨年の日本での純収入は前年度比65%減少して、391百万ドルになった。これは消費者金融事業での4億ドルを超える引当を含んでいる。
  • 事情通によるとシティは日興コーディアルを含む買収対象先のリストを既に書いているということだ。シティはこの件について日興との討議に関与していないが、在日最高責任者のダグ・ピーターソンは「もし日興コーディアルが我々にアプローチしてくるなら彼等の要求を出来る限り迅速に精査する」と述べている。
  • シティは5年以内に店舗(現在25)を倍増する予定だ。

シティが日本での収益を挙げられるかどうかは、個人資産を投資信託等報酬の高い金融商品に取り込めるかどうかにかかっている。この文脈でみるとシティが日興コーディアルの買収をまじめに考えていることが分かる。超富裕層を狙ったプライベート・バンキングから撤退したシティが狙う層はマス・アフルーエント(20万ドルから1億ドル程度の投資可能資産を持つ層)で、それには証券会社パイプが早道だからだ。

それにしても一つの事実(持ち株会社の設立)からどれだけの真実を引き出すか?という点から見ると日本の新聞はお粗末だ。もっとも紙面に限りがあるのでペーパーだけで伝えるは無理だという面はあるが。この点ウオール・ストリート・ジャーナルは将来「紙の新聞は衰退する」「単なる事実の報道だけではネットに勝てる訳がない」「だから事実の背景の報道に努める」という姿勢を取っている。

10年後日本の新聞は今の姿で生き残られるのだろうか?

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