今日(1月18日)の日経新聞朝刊に「GEコンシューマー・ファイナンスやモルガンスタンレー証券が地方銀行が住宅ローンを貸せない人に融資をしている。」「モルガン・スタンレーはローン債権が一定額に達するとまとめて証券化、投資家にリスクを転嫁している」という記事が出ていた。この記事から読取れることとその背景を考えてみよう。
地方銀行が住宅ローンを貸せない人、つまり銀行の審査基準に満たない人はサブプライムSubprimeという。勤続年数が短いとか実際の年収を証明しにくい等の理由でサブプライムになる人も多い。もっともこれは借入人に差別感を与えるので米国では顧客向けにはNonprimeといういう言葉を使うか全く使わない。米国の住宅ローンの場合サブプライムのカテゴリーにはクリア・カットがあり、信用スコアが630未満であるが、日本の場合総ての金融機関を横断する信用スコアはないので、クリア・カットはない。
ところで米国の金融機関はどうして日本のサブプライムな顧客に融資を行なうことができるのだろうか?証券化してリスクを投資家に転嫁するから?答は大部分のNoである。米国の金融機関が日本でサブプライム融資が行なえる理由は、米国でサブプライムな顧客に住宅ローンを実行してノウハウつまり顧客属性とデフォルトに関するデータベースを蓄積して採算の取れる商品としたと考える方が正しいだろう。何故なら証券会社が住宅ローンを証券化して外販する場合でも、高格付を取るためリスクの高い劣後部分は自分で保有したり、初期のデフォルトに対しては買戻特約を付ける等かなりリスクを取るからだ。
私は実際に投資銀行が使っているサブプライムレンディングの信用リスク判断モデルを見た訳ではないが、日本の社会や経済がグローバル化(実は米国化にすぎないが)している中で米国モデルをかなり日本でも適用できるのではないか?と踏んでいる。(無論パラメーターの変換は必要だろうが)
米国の証券会社(モルガンスタンレー等の投資銀行)は、住宅ローン等の証券化で大きなコミッションを得ているので、商売のネタになる住宅ローンを組成する住宅ローン会社(モーゲージバンク)を傘下に抱えていることが多い。
今米国の投資銀行は住宅ローンの実物経済面つまり与信判断と金融技術面つまり証券化技術の組み合わせを世界に拡大しようとしいる。その一例はモルガンスタンレーが昨年12月にロシアでCitiMortgage Bankというモスクワのモーゲージバンクを買収したことである。彼等はロシアで住宅ローンが拡大することを見越して住宅ローンビジネスの垂直統合を目指すと明言している。
私はたまたまこの一例を眼にしたが、恐らくブラジルやメキシコなど新興市場国で大手投資銀行は住宅ローンビジネスの拡大に向けて血眼になっているに違いない。経済が発展してくると人々はより良い住宅に住みたいという夢を持つ。これがかってアメリカの経済を発展させ、国民の求心力を高めるアメリカン・ドリームであった。
今後発展途上国の人々もそれぞれの夢を見るだろう。ロシアン・ドリーム、メキシカン・ドリーム・・・という具合に。住宅ローンビジネスは巨大なビジネスになる可能性がある。いや可能性というより相当な確実性があると言って良いだろう。米国の投資銀行の戦略的発想の大きさには舌を巻く。
この様な時、日本の金融機関は全く蚊帳の外にある。「サブプライムなローンは出せない」と言っている銀行は、儲けの薄い優良顧客向けの住宅ローンをダンピング競争で取り合い、低採算と資金運用難に呻吟する。そしてやがて外資から証券化されたローンプールを高い値段(つまり薄いリターン)で買うことになるだろう。
誠に歯がゆい話ながらこのあたりが日本の金融機関と住宅ローンビジネスの姿だろう。