ファイナンシャルタイムズ(以下FT)に「何故東京の金融・株式市場はニューヨーク・ロンドンに負けているのか?」という記事が出ていた。記事自体金融界に身を置くものとして興味深いが、株式投資の上でもヒントになるところがあるので紹介しよう。
- 東証は今でもニューヨークに次ぐ時価総額を持つ世界第二の株式市場である。その時価総額は4兆6,140億ドルで、香港(時価総額1兆7,150億ドル)やシンガポール(同3,840億ドル)をはるかに凌ぐ。
- しかし1990年以降世界の資本市場が拡大する中で日本市場は貧血状態だった。1990年に日本市場の時価総額は世界の時価総額の3分の1を占めたが、今では世界の株式時価総額49兆9千億ドルの10分の1にも満たない。
- 東証に上場する外国企業は1990年の125社から25社に減少している。これはニューヨークに上場する外国企業の数446社、同ロンドンの315社、同シンガポールのひとかけらである。
余談だが最近読む英字経済紙をウオール・ストリート・ジャーナルからFTに変えたが、微妙な言い回しやよく使う表現が異なるので面白い。FTはFraction(ひとかけら)という表現を良く使う。前の文章の原文はThis is a fraction of the 446 foreign listing in NY。また株価が僅かに動いた場合もfractionと言っている。
- 内閣府大臣政務官(経済財政政策担当・金融担当)の田村耕太郎参議院議員は言う。「もしドラスティックな行動が取られないと、世界の金融センターの地位を中国に奪われることもありうる」
因みに田村議員はかって山一証券に勤務していたことがあるので、金融のプロであろう。内閣府政務官を英語で何というか興味もなかったが、FTにはParliamentary secretary of the Cabinet Officeとあった。将来役に立つことがあるかもしれないから書いておこう。
私は世界の金融のプロの関心は既に日本から中国とインドにシフトしていると考えている。その一つの傍証はFTのAsia-Pacificという欄を開くと「アジア主要ニュース・中国・インド」という構成になっていることだ。日本はアジア主要の中に埋没していて、中国・インドの様に独立したコラムを与えられていない。つまりこれが今世界の関心のあり方なのだろう。
又日本に投資をする海外のプロも日本に拠点を置いているとは限らない。
- 世界市場で代替的な資金の供給源であるとともに洗練された金融技術を提供している多くの新しいファンドは日本を避け始めている。大洋パシフィックTaiyo Pacific Partnersというアクティビストファンドを率いるHeywood氏はカリフォルニア州モントレーに住み、月一回日本に出張しながら日本株投資を行なっている。
この大洋パシフィックというのは友好的なアクティビストファンドである。因みにこのファンドは投資銘柄をそのホームページで公開している。http://www.taiyofunds.com/press.aspx
私も彼等の投資リストを見て面白そうだからローランドデージー(6789)というプリントメーカーの株を買っている。まあこういう行為をチェリーピッキングというのだろう。時間がある時に彼等の保有銘柄を多角的に分析すると、彼等の投資理念が見えてくるだろうと考えている。
なお日本に本拠地を置くことを避けているのはこの大洋パシフィックだけではない。いや大部分の日本にフォーカスしたヘッジファンドは香港等日本の外に拠点を構えてそこで投資を行なっている。
- 安倍内閣の経済財政諮問会議Council on Economic and Fiscal Policy(CEFP)のメンバー伊藤東大教授は「市場をスポーツに例えるならば市場、プレーヤー、アンパイヤ総てが変わる必要がある」と言う。
- 規制・管理上の負担やコスト(書類の日本語化や日本の会計基準対応)のため外国企業は日本での上場を敬遠している。
- しかし恐らくもっとも重大な問題は日本の金融市場がニューヨークやロンドンで使うことができる金融商品に欠けるということである。
その原因の一部は日本で規制緩和が行なわれて精々4,5年しか経過しておらず商品や参加者が成熟していないということだ。FTは債券市場を例に挙げ、日本の債券市場は718兆円のマーケットだが、大半は国債または政府関連の債券で社債は7.2%しかないという。
だが最後にFTは外国の金融機関にとってもっとも骨が折れることは金融庁とやり取りをすることだろうという。これは金融庁が不明瞭な諸規制の解釈について巨大な裁量権をもっていることである。
また他の国ではコンプライアンス・オフィサーは気楽に規制当局にコンプライアンス上の問題を相談することができるが、日本でそんなことをすると金融庁が何か問題があるのかと思って飛んでくるので気軽な相談など望むすべもないとホワイトアンドケース法律事務所のパートナー言っているとFTは報じる。
忙しいだろうが、山本金融相がこのFTの記事を読み何をするべきか考えると良いのだが・・・と思わざるを得ない。もっとも簡単に金融庁の官僚の壁を崩せるとも考え難いが。
結局我々は外国人投資家が日本を敬遠していくのを傍観するしかないのだろうか?そして一投資家としては外国のアクティビストファンドに提灯をつける位しかすることはないのだろうか?