金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

大統領3年目は株高というけれど

2007年05月17日 | うんちく・小ネタ

ファイナンシャルタイムズを見ていると、アメリカの大統領3年目は統計的には株高なので、投資家にハッピーという記事が出ていた。これはある研究によると過去12期の大統領の任期期間を見ると大型株は任期3年目に23.8%上昇、一方一,2,4年目の平均は8.3%だった。小型株の場合はその差はもっと顕著で3年目は38%上昇、他の3年は11.75%の上昇に留まった。

その理由は大統領が再選を目指してより多くの予算を使うからだというのが一般に認識されているところだ。しかし実際の財政支出については任期3年目は平均より1.8%多いが、任期の1,2年目の方がより多い。

ところでこの研究者は「議論は相関関係と因果関係に関する誤った認識に基づいているかもしれない」「大統領は連銀議長と同様株式市場を気にしていない」という。

以上が新聞記事のポイントだ。本題とは少し離れるけれど興味があったのは相関と因果関係の誤った認識というところだ。原文ではFalse correlation。ウイキペディアで調べると、Correlation does not imply causationという言葉が出てくる。相関関係は因果関係を意味しないというこだ。逆にいうと相関関係があるから因果関係があるというのは詭弁であり、False correlationということだ。

つまり大統領3年目に株高が起きるからといって、大統領が予算支出を増やすから、株高が起きるという因果関係があると論じるのは詭弁かもしれないということだ。

なお日本で国政選挙と株式相場の相関を論じた文章を幾つかインターネットで見たことがあるが、「選挙前に相場があがり選挙後は相場は下降する傾向が強い」といった分析が多かった様だ。そしてその理由が述べられていたが後講釈に近いものが多かった。

選挙や大統領の任期と株式相場の間にある程度の相関関係はあるだろうが、相場はもっと多くの複合した要因で動いているのである。

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大手行、賞与アップそれだけで良いの?

2007年05月17日 | 社会・経済

新聞でも報道されているとおり、メガバンクが賞与を5-10%程度アップする。労働市場が好転しているので、ペイを改善しないと社員の確保が難しくなっているのだ。優秀な新卒社員を取ることができないだけでなく、働き盛りの社員がいとも簡単に辞めてしまう。私が良く知っている後輩も最近プイと辞めてしまった。辞めた理由は聞いていないが、ペイだけの問題ではない様だ。ある程度ストラクチャーファイナンスが出来る人物なので、ファンドにでも転職する機会があればペイは上がるが、動機はペイだけではなさそうだ。

ではそれは何だろう。それは「仕事の遣り甲斐」「会社の自分への評価」「上司との信頼関係」といったものではないか?と私は考えている。

孔子は政治とは「食を足し、兵を足し、民之を信ず」(顔淵第十二)といった。政治の目標は「国民の腹を満たし、外敵から守るために軍備を備え、人民との信頼関係を築く」という訳だ。国を現在の会社に置き換えると会社が社員に与えるものは「今の賃金、生産設備・情報基盤、社員との信頼関係」と言っても良い。

孔子の弟子の子貢が質問した。「もし事態が悪化してこの3つの内何かギブアップしなければならないとすると何をギブアップしますか?」孔子は「兵を捨てよう」と答えた。又子貢が質問する。「残る二者でどちらかをギブアップしないといけないとなると何をギブアップしますか」

孔子は「食を捨てよう」と言う。「食がなければ民は死ぬ。死は免れることはできない。いずれは死ぬのである。しかし民との信頼関係がないと民は生きていることも自立することもできない。むしろ死ぬ方が安心である」(宇野哲人「論語新訳」による)

二千年以上も前の中国の地域国家と現在の日本企業を単純に比較しすることは難しい。しかし敢えて対比を行なうとバブル崩壊後の日本企業の中にはリストラという御旗の下で「信」を先に捨てた企業があった。これは積極的に肩たたきを行なったということを指すのみではない。「兵を捨て食を減らして、ともにこの危機を耐えよう。そして危機を克服した時には再び食を分かち合おう」という「強い信頼関係」が失われたのである。

今メガバンクは「食」を戻そうとしている。人員増や情報系への投資も増え「兵」も増えている。しかし「信」はどうだろうか? 「民信なくんば立たず」と孔子は言った。この言葉が時空を越えて今に通用するかどうかは「社員との信頼関係を重視する会社が強いかどうか?」で判断するべきだろう。

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