7日午前、海上保安庁の巡視船と中国の漁船が接触した問題で海上保安庁は公務執行妨害容疑で中国漁船の逮捕状を請求している。外務省は在日中国大使館の参事官を呼び抗議、一方中国側は外務次官が丹羽大使に日本の巡視船による中国漁船による停船に抗議している。
これは昨日(7日)の日経新聞朝刊の抜粋だが、この部分だけを見ると尖閣列島の日本の領有権の正当性を危ぶまれる方がいるかもしれない。
一般の国民が領有権について疑問を持ち、歴史的経緯を調べることは大いに結構なことであるが、疑問を呈する人が一国の首相である場合は話は全く異なる。
鳩山前首相は今年5月27日の全国知事会議で中国が領有権を主張する尖閣諸島問題に関して「帰属問題に関しては日本・中国の当事者同士でしっかり議論して結論を見いだしてもらいたい」と誠に不勉強かつ国益に反する発言を行った。
尖閣諸島についてわが国は1895年より領土に編入することを閣議決定しており、領有権について争う余地がないことを主張している。
その詳しい根拠については外務省のHPをご参照 → http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/index.html
中国および台湾政府が尖閣諸島に関心を持ち始めたのは1969、1970年に行われた国連の海洋調査で大量の石油資源が埋蔵されている可能性が報告されてからのことだ。
1970年以前の地図では中国・台湾とも日本領と認識していたと思われるという記述がある(ウイキペディア)。
尖閣諸島問題が筋の余り良くない問題であることは中国政府も認識していて、この問題で突出しようとする民族主義者の動きを抑えてきた。
今日(8日)の日経新聞によると中国政府は昨日小グループ(40名)による日本大使館に対する抗議行動を容認した(8月に抗議行動は当局が認めなかった)が、これはガス抜きを図ったと見るべきであろう。
ニューヨーク・タイムズによると日頃好戦的な中国のGlobal Times紙は社説で「中国は人々に尖閣海域に入ることを炊きつけていない。日本政府は偶然この海域に入る中国船に対して過剰反応することを謹んで欲しい」と述べている。
尖閣諸島問題とはこのように微妙な問題なだけに、一国の首相の不用意で無責任な発言がとんでもないオウンゴールになる可能性がある。
巷間、来週の民主党党首選挙で小沢前幹事長が選ばれた場合、論功行賞として鳩山前首相に外交面の重要ポストを用意するというウワサを聞く。
だがこの微妙な時期に鳩山氏だけは外交ポストに戻すべきではないと私は主張したい。それは尖閣問題に対する不当な発言を日本政府が追認したという印象を周辺諸国に与えるとともに、今後の不用意な発言が日本の国益を損ねる危険性が高いからだ。