金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

エジプト騒動、オバマ政権外交政策最大の危機

2011年02月04日 | 国際・政治

エジプト騒動の着地点は見えない。最新のロイターニュースは、オバマ政権がエジプト政権とムバラク大統領の即時退任について討議をしていると報じているが、ムバラクの早期退任が米国に良い結果をもたらすかどうかは不透明だ。

エコノミスト誌はThis is the biggest foreign-policy crisis of his presidency so far.と述べている。

最大のリスクはエジプトの新政権の姿がはっきりしないことだ。スレイマン新副大統領が後釜に座ることで落ち着けば、一安心だが別の新政権が国民の人気を得るため、イスラエルにハードポジションをとるとこの地域の力のバランスが崩れるとエコノミスト誌の警鐘を鳴らす。もし米国がエジプトを失うことになるとその影響を計量化することは難しい。ヨルダン、モロッコ、サウジアラビアといった親米国が地すべり的に親イラン的になると、多くの人命と金を投じたイラクでの足掛かりはどうなるのか?という同誌は疑問を投げかける。アルカイーダのナンバーツー・アイマン・アル・ザワーヒリーがエジプト人ということで騒動の裏でアルカイーダが動いていると噂をも聞いたことがある(エコノミスト誌ではない)。

☆   ☆   ☆

ところで少し前に「アラブ圏の政情不安の一つの要因は若者の急増」というレポートがあることを書いたが、今日は「生活に満足できる人の激減がチュニジアとエジプトの騒動と強い相関関係がある」というGallupのレポートを紹介しよう。

エジプトもチュニジアもここ5年間一人当たりGDPは堅実に伸びてきた。2005年のエジプトの一人当たりGDPは4,762ドルで、2010年には6,367ドルに増加した。しかしこの間「生活に満足している」(Thriving)と回答した人は29%から11%に激減している。チュニジアの場合、一人当たりGDPは05年の7,182ドルから10年の9,489ドルに増加しているが、「生活満足度合」は08年の24%(それ以前のデータなし)から、10年の14%に急低下している。

Gallapは一人当たりのGDP増加がどうして生活満足度の向上につながらないどころか逆相関になっているのかと説明はしていない。別途分析してみたいところだが、とりあえず事実をお伝えする。

Gallupの調査によると、アラブ・北アフリカで「生活満足度合」がエジプトやチュニジア並に低い国はモロッコ9%、イエメン12%、イラク13%、パレスチナ14%、アルジェリア20%、レバノン21%だ。

一方満足度が高いのはUAE(55%)、カタール(53%)、クエート(46%)、サウジアラビア(43%)だ。ヨルダン(30%)とバーレーン(27%)が中間だ。

もしGallupの推論が正しいとすると、燎原の火は生活満足度の低い国で、更に拡大する可能性が高い。米国がスレイマン副大統領へ強過ぎる支持を打ち出すと、人々に操り人形という印象を与えかねないリスクがある。まさに米国外交は非常に難しい舵取りを求められる。

米国はエジプトに対し既に年間15億ドルの援助と近代兵器の供与を行なっているが、エコノミスト誌はエジプトとの同盟関係を維持するため、更なる支援を試みるだろうと結んでいた。

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大相撲の八百長、恒常化していた可能性は否定できない

2011年02月04日 | うんちく・小ネタ

大相撲の八百長問題については特段詳しくないのだが、エントリーを書いたところ二つばかりコメントを頂いたので、ついもう少し書きたくなった。

八百長疑惑発覚時に放駒理事長は「過去に一切なかった」と断言していたが、その裏付けとも思われるのが、「週間現代」との訴訟に相撲界側が勝訴し、司法からお墨付けを貰ったと判断したことではないだろうか?

「週刊現代」は平成19年2月に朝青龍の八百長を告発する特集記事を連載した。これに対し相撲協会、朝青龍その他名前が記載されていない力士が原告となって「週刊現代」の発行元講談社を相手取り、名誉毀損で損害賠償を求める訴訟を起こしていた。21年12月に高裁が講談社に損害賠償を命じる判決を下し、講談社は上告したが、昨年最高裁は上告を却下している。

ところがこの原告側力士の中に昨日メールから足が付いて八百長関与を認めた元春日錦(竹縄親方)が入っていることが分かった。もし八百長が事実であれば、八百長を否定する民事訴訟中にも八百長を行なっていたことになる。

興味深いのは「週刊現代」裁判で、被告側証人の元小結板井の証言。彼は「横綱・大関は一番70-80万円で他の力士に負けるように頼んでいた。下位の力士は勝負の貸し借りが原則だった。取組の8割近くが八百長だった」と話していたとインターネット上で読んだことがある。

ところで大相撲の時かかる懸賞金。旗一本が6万円である。内半分が勝ち力士の懐にはいる。朝青龍・白鳳戦で50本位の懸賞がかかったことがあるから、勝ち力士の手取りは150万円。横綱・下位力士戦の懸賞金はその半分以下だろうから、仮に横綱が70-80万円で勝負を買うとすると、懸賞金分+αは持ち出しとなる。一方お金を貰って負けることになる力士は70-80万円のお金が入る。

勝負を売る方の下位の力士は、100%横綱に勝つという自信がない限り7,80万円のお金で星を売る方が短期的には得という計算が成り立つ(因みに平幕力士が横綱に勝つと金星が付き、金星一つで給金が4万円増えるそうだが、この計算は度外視した)。

一方横綱はガチンコでも勝つ確率は高いと思っているが、リスク回避的な行動を取ると推定される。何故なら優勝すると1,000万円の賞金が入るので、時々勝負を「買って」優勝を確実にする方が割が合うと判断する。まして全勝優勝を続けると名誉に加えて金銭的プラスも多そうだ(コマーシャルとか)。

このように純粋に?経済的に分析すると、かなり実力差がある場合でも、時々「星」を買うという動機は存在しそうだ。

相撲界に存在するかもしれない八百長問題を解明するには、ゲームの理論や行動心理学を援用しながら、分析する必要があるかもしれない。

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菅首相の「八百長は国民への背信」発言、天に唾じゃないの?

2011年02月04日 | うんちく・小ネタ

大相撲の八百長疑惑を受けて、菅首相が「八百長があったとすれば国民への背信」という発言があったが、これって少し言い過ぎで天に唾する発言じゃないか?と思った。確かに「国技」という看板を掲げて、税制面で優遇を受ける公益法人ステータスで八百長という興行を行なっているのは、他の興行団体とのバランスにおいてフェアではない。また国民の多くが受信料を払うNHKから多額の放映料を受け取っていることもおかしい。

だが、幾ら内閣と政治に向かっている国民の厳しい眼をそらそうと大相撲を批判しても、白けた気がする。

国民からすると「できもしないマニフェストを掲げて政権を取る」ことの方が背信じゃないの?と言いたくなる。

また小沢一郎氏の処分様子見というのも、無気力相撲じゃないか?と疑いたくなる。検察審査会の強制起訴と検察当局の起訴は別だという意見(仙石代表代行は一緒だという認識を示しているが)は、検察審議会の存在意義に対する不遜な挑戦ともいうべき詭弁であり、起訴されたのであれば、過去の慣例等を踏まえしかるべき処分を行なうべきである。

無気力相撲を取っている政治家から「八百長は国民への背信」といわれても、まず「隗より始めよ」と思わざるを得ないのである。

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