金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

花粉症と大相撲八百長疑惑のアナロジー

2011年02月09日 | うんちく・小ネタ

花粉症の季節が始まったようだ。幸いなことに私は花粉症ではないが、娘の一人は花粉症で早くもスギ花粉を感じると言っている。日本で花粉症が増加した理由を説明するのに一つの仮説がある。それは寄生虫患者が減ったため花粉症が増えたという説だ。人体の中で寄生虫を攻撃するのも、花粉を攻撃するのもIgEという抗体。人体に有害な寄生虫がいなくなったので、IgE抗体は本来人体に無害が花粉に攻撃の矛先を向けてその結果花粉症が起きるという仮説だ。ただしこの仮説が学術的に認定されているかどうかは不明である。

だがこの仮説は今日の大相撲八百長疑惑を考える上であるヒントになると思った。それは「日本の社会のいろいろな不正・談合・インサイダー取引などの諸悪が減ってきたので、社会の正義感が相撲の八百長疑惑まで目に付けるようになった」という仮説である。

例えば総会屋問題については1981年に商法改正が行われ、「不正の請託」の有無に係わらず、株主の権利行使に関して会社の財産を支出した時点で刑事罰の対象となった。その後も総会屋問題は続いたが、警察・検察が企業トップにまで峻烈な態度で総会屋との縁切りを求めた結果、総会屋と交際を続ける企業は激減した。

国別に汚職度を測定してランク付けしたCorruption Indexというものが、Transparency Internationalという非営利団体から発表されている。点数が高いほど汚職度合いが低い国ということで、2010年度はデンマーク、ニュージーランド、シンガポールが9.3(10点満点中)という高い点数で1位を占めている。日本は7.8点で17位。ドイツの一つ下で英国の一つ上という地位だ。Corruption Indexについては信頼性等について議論が多いので、深入りは避けるが注目してよい点は日本の点数が上昇を続けている点だと私は思っている。つまり汚職の観点では日本は良くなっているのである。

色々な点で企業や社会が不正、談合、インサイダー取引といった広い意味でアンフェアな取引を締め出してきたのはほぼ実感できるところだ。

花粉症と寄生虫のアナロジーに戻ると、汚職や不正が多かった時は社会の「正義」抗体はもっと実害の大きな不正を攻撃していた。ところが大きな不正が減少して「正義」抗体は大相撲の八百長にまで攻撃の矛先を向け始めたというのが私の仮説である。

小沢一郎元民主党代表に対する世論の厳しさも同じ流れなのかもしれない。

ただし「寄生虫が減ったので花粉症が増えた」という説があくまで仮説であるように、世の中の不正が減って大相撲の八百長が炙り出されたというのもあくまで私の仮説である。

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どうなる中国の食糧不足懸念

2011年02月09日 | 社会・経済

ニューヨーク・タイムズによると、国連の食糧機関は昨日、世界最大の小麦生産国である中国で深刻な旱魃が起き、人と家畜の飲料水不足が発生していると警告を発した。

また中国の国営メディア新華社は月曜日に中国の主要農業地帯が過去60年で最悪の旱魃に見舞われていると報じた。また火曜日には中国の穀物生産の要である山東省が、今月末までに相当量の降水がないと過去200年で最悪の旱魃に見舞われると報じている。同紙は山東省では昨年9月からの降水量は1.2センチメートルだと述べている。

200年にわたって正確な統計があるのかどうか眉唾な気もしないではないが、非常に深刻な事態が発生していることは間違いない。

国連食糧農業機関(FAO)は中国の35百万エーカーの小麦畑の内12.75百万エーカーが旱魃の影響を受け、257万人と279万頭の家畜が飲料水不足に面していると報じている。

FOAは旱魃の影響は気温零度以下の日が少ないことと政府の灌漑プロジェクトにより緩和されているが、気温が零度以下になると大きな影響がでると警告している。中国の気象予報機関は、山東省で向こう9日間でマイナス6度まで気温が下がる夜があり霜が降りる可能性があると警告している。

中国は小麦の世界最大の生産国で、米国やロシアのほぼ2倍、オーストラリアの5倍を収穫する。しかし中国は長年自給自足を保ってきた(昨年適度な輸入を行なった)ので、その収穫量が世界の穀物市場に与える影響は少なかった。収穫量の少ないロシアやオーストラリアの小麦の収穫量が世界の注目を浴びるのは、彼等が台輸出国だからだ。

中国の小麦の貯蔵量は昨年夏で55百万トン、これは年間収穫量の約半分(つまり半年分の消費量)だ。従って中国が当面小麦不足に陥ることはないが、旱魃が続き小麦不足が発生すると中国が世界の小麦を買い付けに回ることになる。

フィリピンに拠点を置く国際稲作調査機関の責任者Zeigler氏は「中国は必要とするものを何でも買うことができる。彼等は競り勝つ」と述べている。3兆ドル近い世界一の外貨準備を誇る中国が食糧確保に動くと、食糧輸入に依存している発展途上国は深刻な影響を受けることになる。

☆   ☆   ☆

この問題を日本の農業問題とどのように関連付けて考えるべきだろうか?

一つは昨年農水省が発表した「TPPを実施すれば日本に輸入米や小麦が溢れに日本の農業は壊滅する」という予測が全くのデマゴーグに過ぎないということがはっきりしたということだ。このことはブログで以前にも書いたので詳しく繰り返さないが、発展途上国の食生活の変化と気候不順で世界的に食糧と水不足が続くと予想される。例えば中国は世界最大の大豆の輸入国だが、これは主に飼料として輸入しているのだ。

日本に大量の米を輸出する程大量の米や穀物はないと考えるべきだろう。

ただ一方世界的な「食糧危機」を振りかざして、土地持ち非農家まで優遇するような農業政策に走るという過ちを繰り返してもいけない。経営単位当りの耕地面積を拡大するとともに単位面積当たり収穫量を増やすという「企業としての農業」を粛々と拡大するべきだろう。

それと世界のマスコミや研究機関が懸念していることは、中国が小麦の生産不足に陥っても中国人が飢えることではなく、中国以外の発展途上国が穀物価格高騰で苦しむことである。お金を持っている限り、平時には食糧は確保できるということである。

つまり農業以外の産業の国際競争力を高めておくことが、食糧確保につながるということを中国の旱魃はいみじくも教えてくれるのである。

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