他人様が小屋で泊まろうとテントで泊まろうとお好きなように!ということなのだが、敢えてお節介を焼くと、一晩でも山の中でテントで泊まると大部分の人はもっと山が好きになるだろう。
気の合った仲間と自分たちで飯を作り、酒を交わし、星空を観て、寝袋に入る。混雑時の山小屋のように一枚の布団を二人で分け合うこともなくゆっくりと眠ることができる。早く寝た翌朝は早く目が覚める。天気が良いと日の出を拝むことができる。
テント泊まりは良い、と思うひとときだ。
もう少し何故テント泊まりが良いか考えてみよう。「人の一生は重き荷を負いて遠き道を行くが如し」と述べたのは徳川家康だ(東照君遺訓の一説だが後世の人が作ったという説が有力)。
テント泊による山登りは「山での生活に必要不可欠なものだけを担いで登る」という行為で人生そのもののように味わい深い。「あれも欲しい、これも持って行こう」などと欲張ると、たちまち荷物が重くなりへばってしまう。
人は自分の力に見合ったものしか持てない、ということを実感する。当然不自由を感じることもあるが、家康の遺訓は「不自由を常と思えば不足なし」と教えている。
テント泊が良い、としても体力のピークを過ぎた中年がテント登山をする意味があるのだろうか?
私は次の点から意味があると考えている。
- 自分のことは自分でする、という当たり前の生活ルールを徹底することができる。その結果家庭でワイフの負担が減り喜ばれる。
- 料理に関心が高まり、家庭でも「今日は僕が飯を作ろうか」などということになりワイフに喜ばれる。
- 中年も一定年齢を過ぎると時間的余裕は増えるが、経済的なゆとりは減る場合が多い。お金のかかる山小屋泊りよりテント泊まりを推薦する理由の一つだ。
- 一方小屋泊まりより背負う荷物は増える。二泊三日の荷物は13,4kgになるが、日頃からトレーニングをしているとあまり苦にせずに背負うことができる重さだ。「テント泊をしよう」という目標を持ってトレーニングに励むなら、一石二鳥の効果がある。
以上のことから、中年登山者の方はテント泊をしてみましょう。テント代金等初期投資は少しかかりますが、数回で元が取れます。そして何よりも自然にふれる時間が増える分、山の楽しさが深まります。