金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

アメリカの下流層、3分の1に拡大

2012年09月12日 | 社会・経済

ピューリサーチの最近の調査によると、アメリカで「自分のことをlower middle classまたはlower classに属するという人」が増えている。ここではこの層を下流層と呼ぶ。下流層は2008年の25%から2012年には32%に、つまり社会の1/4から1/3に拡大している。

年齢層別に見ると18~29歳の層で、この4年間に25%から39%に拡大した。下流層という言い方は三浦 展さんの「下流社会」で広まった言い方だ。ピューリサーチのlower middleまたはlower classが「下流」とぴったり一致するかどうかは疑問が残るが、三浦さんによると日本でも30歳前後の人の4割が下流意識を持っている、というから日米とも若者の4割は下流意識を持っていると考えて良いのだろう。

ピューの調査を教育水準別に階級意識を見ると、大卒者の「下流意識」は2008年の12%から17%に拡大しているが、大学中退24%→36%、高卒以下32%→41%に較べると、絶対水準でも変化の幅でもかなり小さい。

階層間の社会的流動(移動)性を見ると、「下流意識」を持っている人の61%は育った家庭も下流だと考え、26%は中流だったと考え、12%は上流だったと考えている。「中流意識」を持っている人の40%は育った家庭は下流、44%は中流、16%は上流だったと考えている。また上流意識を持っている人の32%は、育った家庭は下流と考え、中流または上流と考えている人は各々34%だった。

子供の将来の生活水準の予想を階層別に見ると、今よりも良いと考える人は全階層でほぼ等しく4割を超えている。具体的にいうと上流の44%、中流の43%、下流の41%が子供たちの将来は今よりも良いと考えている。違いは子供たちの将来は悪いと予想する人の違いである。上流では18%、中流では26%の人が将来は悪いと予想するのに対し、下流では35%の人が悪いと予想している。

政治意識の調査は非常に興味深い。「どの政党が貧困層に一番優遇的な政策を取ると思うか?」という質問に対し、全階層で30%前後の人が民主党と答え、共和党をあげた人は10分の1の3%に過ぎなかった。

下流意識を持つ人の支持政党別の変化を見ると、2008年には共和党支持者の13%が下流だったが、2012年には23%に増えている。同じく民主党は29%から33%、無党派層は27%から37%に増えている。

お金持ち優遇と考えられる共和党支持者の中で下流意識を持っている層の割合が増えている、ということはどのように考えるべきなのだろうか?

「民主党のように貧困層優遇政策を続けると、社会の活力がなくなる。社会保障を抑え、小さな政府を目指すべきだ」と考える人が多いということだろうか?

リーマン・ショックにより拡大したと思われるアメリカの下流層。自らを下流層、より正確にいうとlower middle classと考える層が拡大していることは、大統領選挙にどのような影響を及ぼすのか?興味のあるテーマだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする