国に勢いがある時は何でもかんでも海外で話題になる。昔FTなどのメディアで日本のニュースが目立ったことがあるが、今はすっかり影を潜め、中国の話題を見ることが多い。
FTに「高考」ガオガオgaokaoと通称される大学統一入試を避けるため、海外に留学する学生が急増しているという記事がでていた。
高考は毎年6,7月に行われ、受験生の集中度を守るため、試験の時期は交通機関の運行も制限されるという大変なものだそうだ。ある中国人学生のブログによると、中国人の中学生は50%、高校生は70%、大学生にいたっては80%が近眼、ということだ。これは世界一厳しい受験競争の結果である。それ程大変な「高考」だが、将来役に立つ内容は乏しく、大学に入ってしまうと1,2年で勉強したことは忘れてしまうそうだ。まあ、我々の受験勉強も同じだったから揶揄する程の話でもないが。
この無益で疲弊する受験勉強を避けるため、海外に留学する学生が増えている。FTによると、2008年には10.5千万人いた高考の受験者が今年は9.15万人に減り、その2割の要因は海外留学生の増加によるという。
海外留学生というと、習近平(一人娘がハーバード大学留学)やこの前失脚した薄氏の息子(同じくハーバード大へ留学)など、共産党幹部や富裕層の子弟を思い起こすが、実際には中流家庭からの留学生が増えている。FTによると、留学生の4分の3は年収30万元(47千ドル)以下の中流家庭出身者だ。
中国には「科挙」という人類史上一番厳しい試験制度があった。厳しい受験競争は中国の伝統なのである。ただし科挙に合格すれば、官吏として将来が保証されたが、今日の中国では海外で高等教育を受けても、中国内で就職するとその分のプレミアムは余りつかないそうだ。
留学費用の回収は大変だが、それでも海外留学生は増えている。礼記に「上(かみ)を学ぶ下(しも)」という言葉があるとおり、古来より上の人がすることをまねてきたと言われる中国人だが、留学熱の高まりは過酷な受験回避だけでない「何か」がありそうだ。