フェイスブックのCEOザッカ-バーグ氏が、年間給料1ドルクラブに仲間入りしたという記事がでていた。
原文タイトルはZucherberg joins buck-a-year salary clubである。Buckは鹿皮のことだが、俗語で米ドル紙幣をさす。なぜ鹿皮はドルになったかというと昔インディアンが取引の時に貨幣の替わりに鹿皮を使ったということが由来のようだ。なおドル紙幣についてはGreenbackという俗称もある。こちらはお札の裏が緑色なのでつけられた愛称のようだ。
「年間に1ドルしか給料を貰わない」という先例はクライスラーを再建したアイアコッカ氏に始まるようで今ではグーグルのCEOエリック・シュミットなどが年間1ドル給料クラブのメンバーだ。
1ドルクラブのメンバーは自分たちは会社から固定した報酬を貰うのではなく、会社の業績を向上させることで配当・株式価値の上昇により還元を受けるというコミットメントを示しているといえる。
記事の中でもう一つ注目しておきたいのは、ザッカ-バーグ氏が昨年持ち株18百万株を慈善事業に寄付したことだ。拠出時の株価がいくらだったかは知らないが現在の株価(63ドル)から見て50ドルと仮定すると18百万株は9億ドル(927億円)に相当する。少なからぬ金額である。
シリコンバレーの巨人アップルやグーグルは世界で最も尊敬される企業の1,2位を占めるが、その理由は私はいくつかあると考えている。第一にインターネットを活用して色々な社会的課題の解決を実現していることである。つまり社会的価値を創出していることである。次に直接間接にビジネスチャンスを提供することで雇用を生み出していることである。次に若い世代にビジネスで成功する夢を与えていることである。そして成功してお金持ちになることは人生の究極のゴールではなく、究極の目的は稼いだお金を世のため人のために使う、ということを実践していることにある。
アメリカは所得格差社会である。格差には悪い面と良い面と両方がある。良い面に限って言うと優秀で高い道徳心を持った少数の人間に集中した富を慈善事業に対する寄付という形で還流させる方が多数の人間から手間暇かけて寄付を募るより効率的だ、という点がある。
そのような考え方が米国の社会を吊り下げているのである。シリコンバレーの大富豪がキリスト教を信じているかどうかは知らないが、恐らく彼らは「金持ちが天国も門を通ることはラクダが針の穴を通るより難しい」という聖書の言葉は良く知っているに違いない。このような考え方が今なお社会を通底している可能性が高いということはアメリカという国を知る上で理解しておいた方が良いことだろう。