金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

消費税引き上げ、さてどうでるか?

2014年04月01日 | うんちく・小ネタ

今日4月1日から消費税は5%から8%に引き上げられた。3月末近くに近所のスーパーに立ち寄ると何かと前倒しで買い物をしている人が多かった。

消費税引き上げに備えた前倒しの買い物のことを英語でfront loaded spending ahead of the tax hikeということを榊原さん(元財務官)のCNBCによるインタビューで知った。

榊原さんによると過去2年間日本の経済成長率は2%。これは日本のように成熟した経済では極めて高い水準なので今ほど消費税を引き上げるに適した時はないということ。消費税引き上げにより一時的に消費は落ち込むが数か月後には回復・・・というのが榊原さんの見立てだ。マクロ的には正しいかもしれないが、個人の生活はマクロではなくミクロである。ミクロ的には3%の増税負担が極めて大きい家計があることに思いを巡らせる必要があるだろう。

17年前に消費税を5%に引き上げた時と今では環境が違うので、消費税引き上げにより景気低迷が長続きしないだろうという見方を示していたのはフィデリティの日本株アナリスト。

97年当時は1)金融システムが今よりもはるかに脆弱だった2)アジアの財政危機があった3)株式市場のvaluationが割高だったとのこと。

マクロの議論としてはこれも正そうだ。

ところで今日私はドコモのスマートフォン上のクーポンを持ってサンマルクカフェに行ってコーヒーを飲んだ。こちらは消費税引き上げ前と変わらず100円である。

他のネットクーポンは知らないが消費税引き上げ未対応(あるいは覚悟の価格据え置き?)が多いのではないだろうか?

それぞれの企業の思惑を混載しながらの消費税引き上げのスタート。株式市場は半年先を見ているというから、既に消費財引き上げ効果は織り込み済のはずだ。ただしその織り込みが正しいかどうかは分らないが。

個人的には消費税引き上げ前に前倒しで買い溜めするものが見当たらないので、front loaded効果に寄与することもないまま4月がスタートした。

消費税引き上げは日本の財政状態から考えると必須の選択である。それ以外の選択肢はない。ただし消費税引き上げが生活を直撃する層への本当の配慮がなされているのだろうか?という疑問は残っている。党利党略や過去のメンツなど捨てて政治家が庶民のレベルまで降りた対策を考えるべき時である。Front loadedなどは弥縫策にすぎない。

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中国の銀行不良債権償却急増、だが実態は?

2014年04月01日 | 金融

FTによると昨年中国の大手銀行は不良債権償却額を前年の倍以上に拡大した。中国経済の減速により、不良債権の重荷が増えているためだ。

ただし不良債権償却額を増やしても、中国工商銀行等大手5行の利益水準はしっかりしている。3月27日に発表された工商銀行の2013年度の利益は2627億元(前年度は2385億元)。昨年12月時点での不良債権比率は前年同時期の0.91%から微増した0.94%にとどまっている。

ただし株式市場のバリエーションによると投資家は不良債権は公式発表額の5倍はあるのではないかと考えているとFTは報じている。

今中国の中小銀行では、破たん懸念の噂が噂を呼び、預金引き出しに預金者が殺到する事態が時々起きている。

そこで公表される不良債権比率が高過ぎるとよからぬ噂が広がる恐れがあるので、不良債権の償却を急いでいると見るアナリストもいる。

最近当局も不良債権償却ルールを緩和し、銀行が不良債権を償却しやすいようにした。これは今後新たに発生する不良債権の吸収を容易にするためだと思われる。

バブル崩壊後日本では、当時の大蔵省が中々銀行に不良債権に対する引当(無税償却)積み増しを認めない時期が続いた。大蔵省は銀行からの税金が減ることを懸念していたのだ。そのことが日本の不良債権処理を遅らせたことは周知の事実。

中国の当局が不良債権償却額拡大を容認する政策を取ることは、金融システム安定の観点からは歓迎するべきことである。と同時にそれは見える氷山の下に相当な不良債権が埋もれていることと、今後不採算企業に大ナタが振るわれることを示唆していると思われる。

ここだけを見ると当時に日本より今の中国の方が資本主義的だ、という感じがしないでもない。

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