来週の大きなトピックはオバマ大統領の来日。オバマ大統領はTPP参加予定国の日本・マレーシアを訪問し、つづいてTPPに関心を示す韓国・フィリピンを歴訪する予定だ。WSJによると「泥沼にはまっている日本との交渉を促進する」ことが大きな目的になっているが、私はいくつかの点から近い将来にTPPがまとまる可能性はかなり低いと考えている。
最初に気が付くことはマスコミ等で言われているように、牛肉・豚肉・乳製品など大きな争点になっている問題でまだまだ距離感があることだ。
だが仮にこれら農産物の関税や輸入拡大について日米間で合意ができたとしても、TPPが米国ですんなりと批准される可能性は低いだろう。
その最大の理由は、オバマ大統領が議会に対して「外国政府との通商条約に関して、個別内容の修正を求めることなく一括承認を求める」貿易促進権限(ファストトラック権限)を持っていないことだ(この大統領権限は2007年に失効し、復活されていない)。
オバマ大統領は今年に入ってTPPに関する貿易促進権限を議会に求めたが、身内のはずの民主党の反対で暗礁に乗り上げている。
伝統的には野党である共和党は自由貿易協定を支持する立場なのだが、TPPの全容が明らかでないので、支持に回るかどうかは不透明だ。大企業がサポートするTPPだが、環境保護団体や労働組合から反対の声は上がっている。たとえばベトナムから安い衣料品が入ってきて、繊維業界が打撃を受ける可能性があるからだ。だがオバマ大統領にとってもっと頭の痛い問題は身内の民主党に反対の声があることだ。
さらに議員たちの多数が超党派的に主張しているのは「TPPの中に為替操作禁止条項をいれるべきだ」という点。今交渉されているTPPには為替操作禁止条項はないが、米議会ではこれを求める声が大きいようだ。
ということで仮に日米間でTPPが合意に達しても、それがそのまま米議会で承認される見通しはあまり高くないと私は考えている。
日本としては「日本が非協力的・非妥協的だからTPPがまとまらなかった」という悪者扱いされることは避けなければならないだろう。なぜならTPPは自由貿易協定であるとともに、台頭する軍事大国中国に対する一つの抑止効果があるからだ。
そのためには米国の事情を押さえておく必要がある。